こちらでは転調の具体的な方法について解説していきます。
あわせて記事の最後では動画による解説も行います。
※「調」の種類、および「転調」の種類については下記記事をご参照ください。
転調 その1 転調の概要(転調とは中心音と音のグループを変えること)と調の種類
転調|その2 – 転調の種類(一時的な転調と本格的な転調について)
転調の方法
ドミナントモーションの活用
ダイアトニックコード内の「V7」から「I」への流れ(ミナントモーション)はコード進行の中で最も結びつきの強いものとして扱われており、この概念は転調の際にも同様に活用されます。
※ドミナントモーション解説ページ
ドミナントセブンスとドミナントモーションについて|コード進行を操る重要な働き
下記は前述のサビ1からサビ2に対する「本格的な転調」のコード進行例です。
- サビ1(キー=C):「C → Dm7 ~ G#7 →」
- サビ2(キー=C#):「→ C# → D#m7 → Fm7 …」
ここでは「サビ2」の冒頭にある転調後の主調「C#(I)」に対しその直前(「サビ1」の終わり)に「G#7」が配置されています。
「キー=C#」のドミナントセブンス「G#7(V7)」を事前に配置することによって、そこからトニック「C#(I)」が連想され、新たな調に対して強い結びつきを持ってコードを進めることができるようになります。
関係調への転調はもちろんのこと、この例のような関係の薄い調への転調の際にもこの概念は効果的で、転調を実施するタイミングにおいて新たな調のドミナントセブンス(V7)にあたるコードをその直前に一つ配置するだけでそこへ向かう流れを形作ることができます。
同様にドミナントセブンス(V7)と強い結びつきのある「IIm7」を使った「IIm7 → V7」(ツーファイブ)の形も転調の際に頻繁に活用されます。
下記は先ほどの構成をもとにドミナントセブンスをツーファイブ型として配置した例です。
- サビ1(キー=C):「C ~ D#m7 → G#7 →」
- サビ2(キー=C#):「→ C# ~」
「サビ1」の終わり部分にて「G#7(V7)」の前に「D#m7(IIm7)」が配置されたことでより自然な流れができあがっています。
※ツーファイブ解説ページ
ツーファイブとは?(概要と基本的な成り立ち、活用方法、マイナーキーにおける例など)
「I」を転調の開始点としない場合
また転調は上記の例のように新たなキーの「I」から始まるものだけではなくその他のコードを開始点とする構成も想定できます。
具体的には、例えば「C」というキーに転調するとしてその開始点を「IIm7」である「Dm7」としたり、「IV」である「F」としたりすることを指します。
下記は「キー=E」から「キー=C」に転調する例です。
- 転調前(キー=E):「E → B → C#m → A7 →」
- 転調後(キー=C):「→ Dm7 → G7 → C」
この例では転調後の開始点を「キー=C」の「IIm7」である「Dm7」としています。
この場合にも前述のドミナントセブンスやツーファイブの活用は有効で、開始点となるコードを「I」と捉えてそれに対するドミナントセブンス(V7)を配置することで対応します。
ここでは「Dm7」のドミナントセブンスにあたる「A7」を転調前に配置することで、転調後のコードに向かう流れを作っています。
ピボットコードの活用
転調前と後のそれぞれの調に共通するコードが存在する場合、それを転調の足掛かりとして活用することができます。
それらのコードは「ピボットコード」と呼ばれ、転調前の調でコードを展開させながらピボットコードを経由することで新たな調へ違和感なく移る流れを作ります。
- 転調前(キー=G):「G → Bm7 → E7 →」
- 転調後(キー=A):「(Bm7 → E7)→ A …」
上記は「キー=G」から「キー=A」への転調に際してピボットコードを活用した例です。
「キー=G」における「Bm7」は「Gダイアトニックコード」内の「IIIm7」として存在しており、同様に「キー=A」では「Bm7」は「Aダイアトニックコード」内の「IIm7」となります。
「Bm7」をピボットコードと捉えることで「キー=G」の自然な流れの中で「Bm7 → E7」(ツーファイブ)の形を作り、「キー=A」に向かって円滑に展開できていることがわかります。
特に関係調への転調の際には転調前と後で多くの共通するコードが含まれるため、このピボットコードの概念が重宝します。
動画で解説
「文章ではよくわからない!」という方のために下記動画でも転調の種類と方法について解説しています。
是非参考にしてみてください。
まとめ
ここまで解説した転調の方法のまとめです。
- 転調の際には、主に「ドミナントモーション」と「ピボットコード」を活用する
- 「ドミナントモーション」を活用する場合には、新たな調の直前に、そのキーのドミナントセブンスコード(V7)を配置する
- 「ピボットコード」を活用する場合には、転調前と後で共通するコードを中間に配置して、無理のない流れを作る
転調にはこれら以外にも様々な手法が活用されていますが、曲調や求める雰囲気に合わせていろいろなやり方を試していくことでその効果を体感できるはずです。
次の記事ではコードの響きを豊かにする「セブンスコード」の概念について解説しています。
セブンスコードの解説 コードに「7度」の音を含む四和音、その成り立ちと詳細について
音楽理論について詳しく知る
音楽理論を知りたい人のための「学習の見取り図」※独学に活用できる「音楽理論の何をどの順番で学べばいいか」のまとめポップス・ロック作曲の上達につながる「曲分析ガイドブック」について知る
作曲がぐんぐん上達する「曲分析ガイドブック」のご紹介ページ