こちらのページでは、コード進行の理解をより深めるためのお手本として、名曲のコード進行を13曲ほど取り上げていきます。
今回は邦楽に限定して、時代を超え多くの人に愛されている曲のコード進行をまとめました。
※コード進行は、原曲の雰囲気から離れすぎない程度に簡略化させています。
目次
1980年代以前
「上を向いて歩こう(坂本九)」
G→Em→G→Em→G→Bm→Em→D7
こちらはAメロ冒頭のコード進行です。
曲は軽快なリズムと当時のジャズポップス的な陽気さを兼ね備えていますが、コード進行もそれを引き立てるように、クラシカルな解釈から成り立っているように感じます。
また頻繁に登場するトニック「G」によって、サウンドの安定感は高まっています。
「Em→D7」は本来であれば「Am→D7」としたいところですが、このようなモダンな響きはこの曲が名曲として愛される理由といえるかもしれません。
「時代(中島みゆき)」
C→Am→F→G7
こちらはサビ冒頭のコード進行で、ダイアトニックコード内のコードを「トニック→サブドミナント→ドミナント」と進む定番の流れとなっています。
シンプルなコード進行でありながらそこに名曲としての魅力を持ったメロディが付けられており、作曲者の技術力を感じます。
「I LOVE YOU(尾崎豊)」
A→C#m→F#m→Bm→E7
作品の中では、こちらのコード進行が「Aメロ」および「サビ」に活用されており、そのような意味から本作を象徴するコード進行ともいえます。
ダイアトニックコード内の代理コードを活用してコードは展開し、中でも
というルートの動きはすべて完全4度上に向かう「強進行」の形となっています。
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強進行について(通称「4度進行」=ドミナントモーションの元になる力強い音の動き)
「レイニーブルー(徳永英明)」
A→B7→G#7→C#m
こちらにあるように、本作のサビは「キー=E」における「A」(サブドミナント)のコードから始められています。
サビを聴いた時に感じる「続きを聴いてみたい」という印象は、このコードの響きが生み出しているとも解釈できます。
この楽曲も、名曲として歌い継がれています。
「未来予想図II(DREAMS COME TRUE)」
G→F#m7-5→B7→Em→C→D7
「ドリカムの名曲」として挙げられるのが本作で、こちらのコード進行はサビ冒頭のものです。
特筆すべきは「F#m7-5→B7」の動きで、これはセカンダリードミナントコード「B7(III7)」をツーファイブによって分割したものです。
それにより、本来あまり出番のない「F#m7-5(VIIm7-5)」をコード進行の中に盛り込むことができています。
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セカンダリードミナントコード 成り立ちとその表記などをわかりやすく解説します
ツーファイブとは?(概要と基本的な成り立ち、活用方法、マイナーキーにおける例など)
1990年代
「少年時代(井上陽水)」
A→E→C#7→F#m→D→A→Bm→E7
90年代初頭の名曲である本作は、70年代から活躍する陽水さんの余裕のようなものが感じられる作品で、神聖なピアノの響きもトレードマークとなっています。
こちらのコード進行はAメロで展開されている流れで、カノン進行をセカンダリードミナントによってアレンジしたような形となっています。
自然な流れの中に、ちょっとしたアクセントが加わっていると感られます。
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カノン進行によるコードのつなげ方と例 定番のコード進行とそのアレンジについて
「どんなときも。(槇原 敬之)」
B♭→F→Gm→A7→Dm
こちらはサビ冒頭のコード進行です。
本作でも「キー=F」における「B♭」、サブドミナントのコードからサビが始められており、それによって「展開の途中にあるようなサビ」という雰囲気が生まれています。
この楽曲の魅力は「どんなときも、どんなときも…」というメロディとそのリズムにありますが、それらを引き立てるコード進行もこのように聴きごたえのあるものにまとめられています。
「TRUE LOVE(藤井フミヤ)」
C→G→Am→C
アコギ弾き語りのための名曲としてもおなじみの本作では、Aメロにこのようなコード進行が扱われています。
ダイアトニックコードの中でスタンダードな展開を見せるコードの流れはとてもシンプルで、そこからは大人っぽくてしっとりとした雰囲気が感じられます。
「チェリー(スピッツ)」
Am→Em→F→C
スピッツの代表曲でもあるこちらの曲は、上記のようにサビが「Am」から始められており、これは「キー=C」における「VIm」に相当するコードです。
このように、明るくて軽快な印象を持った楽曲のサビがマイナーコードから始められている点は少し興味深いです。
反面で、Aメロ等はトニックのコード「C」から始められており、ブロックごとにきちんと対比が付けられています。
「HOWEVER(GLAY)」
C→ConB→Am→AmonG
90年代のGLAYの人気を決定付けた本作も、また名曲の一つとして認識されています。
こちらのコード進行はサビ冒頭のもので、オンコードを活用し、ベースラインを
と下げていくような流れを生み出しています。
メロディと合わせることでより魅力を増す、という編曲的な観点から作られたコード進行とも捉えることができます。
「First Love(宇多田ヒカル)」
G→D→Em→D
こちらもサビの冒頭にあるコード進行で、トニックの役割を持つ「G」「Em」と、ドミナントコード「D」を交互に登場させるようなコードの流れが作られています。
それによってコードから感じられる響きはドラマチックなものになり、本作の持つテーマに融合しています。
こちらも90年代を代表する名曲といえます。
2000年代以降
「桜坂(福山雅治)」
G→D→Em→D→C→D7→G
こちらはAメロ冒頭で扱われているコード進行ですが、前述した「First Love」と曲調は違えど同じコードの流れとなっているところは興味深いです。
トニック「G」から始まった展開が最終的にまた「G」に行き着く、というコンパクトにまとめられたコード進行だと解釈できます。
この楽曲もまたメロディに魅力があり、このようにスタンダードなコード進行がそれを支えている、という点が素晴らしいです。
「涙そうそう(BEGIN)」
A→E→D→A→D→A→Bm→E7
最後にご紹介するのは多くの人にカバーされているBEGINの名曲で、こちらはそのAメロで聴くことができるコード進行です。
展開は前述した「カノン進行」の流れに似ており、それがコード進行としての説得力を生んでいます。
一部に「D→A」という流れが続いている部分がありますが、メロディと組み合わせて聴いてみるとそれでもすんなりと聴けてしまいます。
トニックコード「A」がいくつか組み込まれているところも特筆すべき点で、それによってコード進行に安定感が生まれています。
まとめ
名曲のコード進行をここまでご紹介してきましたが、こうやってまとめてみると、どの曲もコード進行は思いのほかスターンダードだとわかります。
それが、名曲として何度も聴きたくなってしまうような魅力につながっているのかもしれません。
これらを参考に、また新たな名曲を生み出すべくいろいろなコード進行を是非追求してみて下さい。