こちらでは、作曲初心者がいちから始めてスムーズに曲を作れるようになるまでに「こんなことをこんな順序でやってみるのがおすすめ」というあたりをまとめてみます。
作曲に取り組み始めた初心者の方、またはこれから作曲を始めようとしている未経験者の方もあわせてぜひ参考にしてみてください。
目次
やるべきことの詳細と順序
まず初めに、やるべきことのすべてを順序と共に示します。
- 弾き語り
- コード進行の定番にメロディを乗せる
- 短い曲を3曲程度作る
- きちんとした1曲を作る
- 音楽理論を学ぶ
- 理論を踏まえて曲分析をする
- 理論および曲分析をふまえて作曲(4に戻る)
この内容を順序に沿ってこなしていくことで、初心者の方でも無理なくステップアップしながら作曲に慣れ、そこからさらに作曲を継続させることでより高いレベルを目指すことができるはずです。
これ以降で、それぞれの項目について詳しく解説します。
1. 弾き語り
まずひとつめにやるべきことは「弾き語り」です。
これは、具体的にはギターまたはピアノを使ってコードを演奏しつつ、それにあわせて歌う行為を指すものです。
これを曲のイントロからアウトロまでを通して1曲弾けることを目指し、かつそれを大体10曲程度、なるべくいろいろな曲調を持つ曲でやれるようになるのが理想的です。
弾き語りをやる利点は
音楽の構造を知ることができる
という点にあり、いくつかの曲を弾き語っていくことで、例えば
- 「曲のサビってこんな感じ」
- 「Aメロから始まってBメロを経由してサビまで盛り上がっていくパターンが多い」
などのように、一般的な音楽がどんな構造になっているかというサンプルにたくさん触れることができます。
また、それ以外にも、
- いろいろな曲で使われているコード進行を知ることができる
- メロディを頭に思い描き、それを声として発する練習になる
などの効能が弾き語りにはあり、つまり弾き語りによって作曲に取り組む前の準備ができます。
作曲の経験が無い状態でいきなり曲作りに取り掛かるのはハードルが高いため、まずはそのための準備をするというのがここで「弾き語り」をやるべきことの一番目に挙げている理由です。
2. コード進行の定番にメロディを乗せる
次にやるべきことは
「オリジナルなメロディを作る練習」
ともいえる行為で、具体的には上記で挙げた「弾き語り」で知り得たいろいろなコード進行を活用して、それを伴奏としながらメロディを生み出す練習をやってみて欲しいです。
弾き語りを10曲ほどやっておくことで、既に述べた通り
- いろいろなコード進行を知る
- メロディを歌うことに慣れる
などの点を満たすことができるため、それらの経験をもとに無理なくオリジナルなメロディを探っていくことができます。
またこの作業は弾き語りによって身につけた「キー」の感覚をもとに、その
「音の組織=サウンドのまとまり」
の中でコード進行を組み立て、かつメロディをイメージする(曲を作る)ということにもなり、それが本格的な作曲の足掛かりにもなることから弾き語りの次に進むべきステップとして最適です。
いわゆる「鼻歌」のようにただ漠然とメロディをイメージするのではなく、コード進行によって「キー」という音のまとまりを感じながら、その中でメロディをイメージする、というところがポイントとなります。
3. 短い曲を3曲程度作る
メロディ作りにある程度慣れたら、次にいよいよ曲作りに入ります。
ここでは、壮大で立派な1曲を作ろうとせずに、「作曲の練習」のような位置づけとして
「あえてシンプルな曲を完成させること」
を目指します。
この作業も、ここまでに取り組んでいることからのステップアップとして無理なくこなせるもので、具体的には
- 弾き語りで知った音楽の構造
- オリジナルなメロディ作りで身につけた感覚
をもとに、自分なりに曲作りを進めてみるやり方で問題ありません。
既に述べた通り
- 単純で簡素なメロディ
- 定番の(よくある)コード進行
- わかりやすい構成
などをあえて許容して、童謡のように短い曲を作るつもりで取り組むのがおすすめです。
これを、曲数としておおむね3曲ほどやれると、作曲の流れや力の入れどころ、難しさなどがある程度体感できます。
4. きちんとした1曲を作る
上記によって作曲の練習が済んだら、ついにきちんとした1曲を作ることに取り組みます。
こちらも同様に、これ以前にやっていた弾き語りやメロディ作り、そして前述の「短い曲作り」を通して得た経験をもとに、今度はポップス・ロックの曲として成立するような、
- 聴きごたえのあるメロディ
- 3分~4分程度の長さを持つ
- 「A→B→サビ」のように場面転換がきちんと感じられる
などの要素を持った曲を目指して曲作りを進めてみてください。
いきなりきちんとした作曲に取り掛からない
「作曲をやってみたい」と考えて、経験が全くない状態でいきなりこの「きちんとした1曲を作る」というところに取り組む人がいますが、上記でも述べているようにやはり
- 一般的な音楽の構造を知っていること
- メロディ作りの感覚がある程度磨かれていること
- シンプルな曲が既に作れること
などを満たしているか否かが重要で、これらを省略してしまうことで思いのほか曲作りを進められず作曲の難しさばかりを感じてしまうケースはよくあります。
そのような意味からも、既に「1~3」で挙げた三つのステップを経験し、それを踏まえたうえで本格的な曲作りに向き合うことをおすすめしています。
ここで無理なく曲作りができたら、感覚的なやり方で構わないため2曲→3曲と作曲を繰り返し、ぜひいろいろな曲を作ってみてください。
5. 音楽理論を学ぶ
本格的な作曲をそれなりに経験できたら、次のステップとして音楽理論の初級部分について少し学びます。
ここで重要なのが、
作曲を先に経験する、理論をあとから学ぶ
という順序にしている点で、これによって経験が理論に結びつき、体系的な概念を自分の経験によってきちんと定着させることができます。
多くの人は作曲に取り掛かる前の準備として音楽理論をみっちりと学ぼうとしてしまいがちですが、私がおすすめするのはそれよりも作ることです。
ここで挙げているように、弾き語りの経験やメロディ作りの感覚が持てていれば曲は組み立てていくことができるため、まずは自由に作曲を繰り返して、その後に理論を学ぶようにすることでそれらをより効率よく上達につなげていくことができるはずです。
6. 理論を踏まえて曲分析をする
理論の学習が少しできたら、その段階で曲分析に取りかかることもおすすめしています。
より厳密にいえば、
「習得した理論的概念が実際の曲でどのように使われているか?」
を確認し、知識を実用的なものにしていくことを目的として曲分析に取り組めると望ましいです。
そもそも、ここで挙げている順序の冒頭で行っていた
弾き語り=音楽の構造を知ること
が既に曲分析の一種とも呼べるもので、これを踏まえると弾き語りをしながら、音楽理論的な観点を持ちつつ曲の構造を紐解いていくやり方もより効率的だといえます。
7. 理論および曲分析をふまえて作曲(4に戻る)
これらを経て、改めて作曲に取り掛かりますが、ここでの作曲は「音楽理論」や「曲分析」を踏まえたものになり、それまでよりも音使いにより明確な意図を込めたり、分析を踏まえた新たなアプローチを盛り込んだりと、より高いレベルでこなすことができるようになるはずです。
作曲は「曲作り」の行為そのものを通して上達するため、知識を必ず実用に結び付け、実際の作曲を通してそれらを使いこなせるようになることを目指してください。
また、作曲を終えたら初級部分にとどまらない新たな理論的概念や、理論とは種類の違う
「曲作りのテクニック(曲をどう展開させるか/どのようにして聴きごたえのある曲にするか)」
についても学び、曲分析を連動させながらそれらも実用的な手法として身につけていくことができます。
そして改めて作曲に戻り、実際の曲作りを通してさらにレベルアップを図るように、
学習→分析→曲作り…
というサイクルを回していくことで、さらなる上達を目指していくことができます。
動画解説
ここで述べている内容について、動画でも解説しています。
まとめ
ここまでにご紹介した、「作曲初心者が曲を作れるようになるためにやるべきこと」を順序に沿って改めて以下に示します。
- 弾き語り
- コード進行の定番にメロディを乗せる
- 短い曲を3曲程度作る
- きちんとした1曲を作る
- 音楽理論を学ぶ
- 理論を踏まえて曲分析をする
- 理論および曲分析をふまえて作曲(4に戻る)
ポイントとなるのは、
- 弾き語りを作曲の基礎技術/知識につなげる
- まずは感覚的に作る
- 作曲の経験をあとから学んだ理論によって整理する
などの点です。
これらをもとに、少しずつにステップアップしていくことを目指してみてください。
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