以前にこのような投稿をしました。
曲分析から学んだことをまとめました。 pic.twitter.com/vJqz7O0Xi3
— うちやま|作曲の先生 (@sakkyoku_info) August 11, 2021
画像付き投稿のため少し長いですが、私がこれまでにやった曲分析の結果から、そこからの学びとして思いつくものを一覧にしてみました。
こちらではここで挙げている項目のうち、特に作曲を進めるうえで大切だと感じる事柄についてより詳しく解説してみます。
目次
曲分析を通して学んだことのまとめ
まず、(項目数がとても多いですが)上記にてご紹介している学びの一覧を改めてこちらにも列挙します。
- ヒット曲のコード進行は結局どれもシンプル
- メロディにどんなコードをつけるかがメロディの魅力を引き出すためのポイントとなる
- 理論的に不自然なコード進行も案外よく目にする
- 古い時代から新しい時代になるほどに曲は長めになり、曲のコード進行はより複雑化している
- Aメロやサビのコード進行をイントロアウトロに流用できる
- 同じ形のフレーズを繰り返して長いメロディにする手法は多い
- 歌メロディの音階は基本的になだらか
- 音階を上げ下げせずに同じ音を連打するメロディも多い
- 曲の終盤で半音または全音高いキーに転調する手法が多い
- アイドルソングはサビで急に転調しがち
- アイドルソングは個性的より聴きやすさが重視される
- ヒット曲には曲前半に次を聴きたいと思えるつかみがある
- サビ直前に特徴的なフレーズを盛り込む手法が多い
- R&B風の曲もメロディは演歌みたいな音階だったりする
- メジャーキーでも切ない雰囲気が感じられる曲は多い
- 良い曲は弾き語りで歌っても良い
- サウンドやビートのオシャレさだけだとやっぱり弱い
- 同じコード進行を持つ曲でもアレンジで全然違う感じになる
- 同じコード進行を繰り返すだけで成り立っている曲も多い
- 80年代以降の日本のポップスで多いのはABサビ形式
- 80年代以前の曲や洋楽はAB形式やABA形式などが多め
- ABサビ形式のBメロは結構自由なやり方が許される
- ツーコーラス目以降は単にワンコーラス目を繰り返すだけではなくメロディやコードや構成になんらかの変化が必要
- 特徴的な曲タイトルの方がより聴いてみたいと思える
- 曲は普通でも歌詞の深さや歌い手の表現力で結構良い曲に感じられる
- 本当に技術力のある作曲者はいろいろなタイプの曲を作れてメロディも多彩でどれも魅力的でやっぱりプロ
- 本当に良い曲は古さを感じない、時間が経っても良い
この中には具体的な作曲法につながるものが多く、それぞれは読んで字のごとく、そのまま作曲手法のひとつとして活用することができるはずです。
またよくある楽曲のパターンや少し私個人の感想に近いものもあわせて挙げています。
そのうで、中でも特に作曲するうえでの根本的なヒントとなるような事柄がいくつかあるため、これ以降でそれらについて詳しく紐解いてみます。
曲分析を通して学んだこと(特に実用的な事項)
1. ヒット曲のコード進行は結局どれもシンプル
まず第一に挙げられるのがコード進行についてです。
多くのヒット曲や、いろいろな人に支持されている曲を分析してみると、コード進行のシンプルさにいつも驚かされます。
曲は基本的にひとつのキーを持ち、ポップス・ロック等の楽曲におけるコード進行はそのキーのダイアトニックコードを活用して組み立てられます。
ダイアトニックコードとスリーコード 概要や成り立ち、コードの役割などについて
これらは曲を「まとまりのあるもの」に感じさせるために欠かせない概念ですが、ヒット曲や時代に残る曲ほどこのダイアトニックコードを忠実に守り、基本的なフォーマットに沿って作られている傾向にあります。
「難解」は「質の高さ」ではない
そもそも、作曲に慣れてくると多くの人は
- シンプル=簡素なものは面白みがない
- 少し難解なものほどハイレベル=質が高い
という考えに至ってしまいがちです。
そこから、メロディやコード進行をやたらと複雑なものにしたり、必要のないものをむやみに盛り込もうとしてしまいます。
その結果、曲は一部の人にしか受け入れられないものになってしまいますが、これは本来の「良い曲にする」という目的を考えると本末転倒だといえます。
このような状態は、作曲に限らずものづくりや表現活動の全般にいえることです。
基本に沿ったものは親しみやすい
その反面、シンプルで基本に沿ったものは多くの人に受け入れられやすく、親しみやすさを持っています。
多くの人からの共感を得るためにはこの点に配慮すべきで、ヒット曲のコード進行から改めてそれを学ぶことができます。
つまり、作曲をするうえではシンプルで自然なコード進行をその中心に据えるようにして、そこにわずかな個性を加えるべきです。
より具体的にいえば、
- ダイアトニックコードを活用した親しみやすいコード進行を軸とする
- ダイアトニックコードから外れるコード(若干ひねったコード使い)を一部に活用する
というやり方によって「親しみやすく、かつ個性的でもある」という状態を生み出すことができます。
ヒット曲の中には、完全にダイアトニックコードのみによって成り立つような、とてもシンプルなコード進行を持つ曲も多数あります。
まず基本を押さえ、それを忠実に守りつつもそこから少し外れるような構成を目指す作曲のスタイルが評価を得るための近道だといえそうです。
2. メロディにどんなコードをつけるかがポイントとなる
次に挙げられるのが「メロディとコードの関係」についてです。
その内容はここに挙げた通り「メロディにどんなコードをつけるかが重要」だということで、これはつまり
- メロディの印象はコード(ハーモニー)によって大きく変わる
- メロディの魅力を引き出すうえで、コードも十分に検討するべき
ということを意味しています。
主役はメロディ、それを引き立てるハーモニー
一般的に、音楽の主役はメロディだと考えられています。
これは、ある楽曲を連想するとき多くの人が真っ先にメロディを頭に思い浮かべることからも理解できます。
そのため、「作曲」という行為を「メロディ作り」に置き換えて考えてしまいがちですが、曲分析からはコードによってメロディの印象が大きく変わることがわかっています。
つまり、主役(メロディ)をより引き立てる為にはそれを支える背景(ハーモニー)も入念に作り込む必要があるということです。
同じメロディにいろいろなコードが検討できる
音楽には「リハーモナイズ」という概念があります。 リハーモナイズの解説|概要と考え方、やり方や実例などを詳しく説明します これは、上記別ページでも解説している通り「ハーモニーを改めて作り直すこと」を意味する言葉ですが、作曲におけるコードの検討はこれに近いものがあります。
思いついたメロディに対し出来るかぎりいろいろなコード付けを行い、どれが最もメロディに似合うかを検討できるとより望ましいです。
それには根本的にコード進行の仕組みや成り立ちを理解しておく必要があり、そのような意味からも作曲に音楽理論の知識が欠かせないことがわかります。
3. 理論的に不自然なコード進行も案外よく目にする
次に挙げたのは、コード進行構築に関する心得に近いような項目です。
ポピュラー音楽においては理論を乗り越えてしまうような構成が頻繁に登場しますが、曲分析からもそれは見て取れます。
理論にそこまで縛られなくていい
ここで述べているのは、端的にいえば
「理論を乗り越えてこそポップス・ロックだ」
というようなことで、個人的にも理論や決まりごとにそこまで縛られなくて良いと考えています。
もちろん、上記でも述べた通りコードを検討したり、筋道を立てて作曲を進めていくために理論的な知識は必要となりますが、それによって作品が小さくまとまってしまったらやはりつまらないはずです。
実際に曲分析をしてみても、いろいろな曲で個性的な構成が柔軟に活用されていることがわかります。
理論を踏まえつつ、最終的には自分の感覚や好みを優先できると曲はより自分らしいものになっていくはずです。
4. 良い曲は弾き語りで歌っても良い
最後に挙げたのは「楽曲の品質」に関する学びです。
サウンドに頼らない
現在はDTMによる音楽制作が一般化しているため、誰もが豪華なサウンドで曲を装飾することができます。
そんな中で、やはり時代に残る名曲や、それを含む本当に質の高い曲はサウンドの力を借りずとも「良い曲だ」と感じる魅力を持っているものです。
これは、ページ冒頭で一覧として挙げた中にある
「サウンドやビートのオシャレさだけだとやっぱり弱い」
という学びにも通じます。
楽曲の品質を追求するうえでは極力サウンドによる装飾を取り払い、メロディやコード進行、曲構成などの根本的な楽曲の骨組みを確認すべきです。
そのために、具体的には
- 曲を弾き語りによって表現してみる
- ピアノ1本のアレンジに置き換えてみる
などによって曲の質を確認することが検討できます。
裏を返すと、弾き語りやピアノアレンジによって曲の骨格を作り、それを装飾するように音源を作成していけば上記の確認を行いながら音楽制作を進めることができます。
作曲をするうえでは上記を念頭に置き、サウンドに逃げることなく曲本来の品質を高めるような意識を持って取り組んでいきたいものです。
まとめ
以下に、上記で解説した4つの項目を改めてまとめます。
- ヒット曲のコード進行は結局どれもシンプル
- メロディにどんなコードをつけるかがポイントとなる
- 理論的に不自然なコード進行も案外よく目にする
- 良い曲は弾き語りで歌っても良い
ここで解説した4点以外にも個人的に興味深い学びがいくつもあり、このような生きたデータが取れるのも曲分析の利点だといえます。
是非みなさんも気になる楽曲を作曲的な視点から分析し、そこから自分なりの学びを得てみて下さい。
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