こちらでは、PCを使った作曲/音楽制作を前提として「作曲に必要なもの(機材)」について詳しく解説します。
目次
「曲を作る」だけならピアノがあればいい
そもそも、単に「曲を作る」ということだけを考えるのであれば、ピアノがひとつあればそれで充分です。
それは、これまでに歴史に名を残す有名な作曲家たちがピアノひとつで名曲を作ってきたことを考えると理解できるはずです。
そのうえで、こちらのページでは最近の主流となっている「PC(パソコン)を使った音楽制作」を前提として、そこで必要となるもの=機材を考えていくこととします。
PC(パソコン)を使った作曲(音楽制作)で必要となるもの
PCを使った作曲で必要となるものの一覧は以下の通りです。
- PC(パソコン)
- DAWソフト
- スピーカー・ヘッドフォン
- MIDIキーボード
- MIDI/オーディオ インターフェース
- マイク
- プラグイン(音源)
- プラグイン(ミキシング・マスタリング)
これ以降で、ひとつずつ詳しく解説していきます。
必要なもの[1]PC(パソコン)
「PCを使った作曲(音楽制作)」ということで、まず必要になるのがパソコンです。
一般的に、音楽制作に使用されるPCは高スペックであるほど良いとされています。
後述するDAWアプリをPC上で動かし、そこで音源の編集をしたり、一度にたくさんの音を鳴らすにはそれなりのパワーが必要になるからです。
またPC本体に負荷がかかると、内部のファンが回ったりすることでその稼働音が耳障りだと感じることがあります。
既に述べた通り音楽制作を行うPCには高い負荷がかかるため、特に近くでマイクを使って音を録音するような時には、PCの稼働音がなるべく静かになるように配慮するなどの注意が必要です。
PCの価格は多くの人が一般的にイメージできるように、数万円から数十万円まで幅広いですが、ある程度のスペックを求めると5~10万円程度は必要になりそうです。
ノートかデスクトップか
PCには「ノート」または「デスクトップ」という選択肢があります。
スタジオなどに持ち運んで作業をする場合や、PCの設置スペースが限られている場合にはノートPCを選択することになりますが、一般的にノートPCはデスクトップPCに比べてスペックの上限が決まっています。
これは小さな本体の中に部品が組み込まれている、というノートPC自体の特性によるものです。
前述の高負荷対策としてPCを静音化したり、メモリを増設したりしてスペックを上げるためには、やはりデスクトップPCがおすすめです。
加えて、PCを使った音楽制作においてはディスプレイの中にいくつもの画面を開いて作業をしていくことが一般的です。
ノートPCの小さなディスプレイでは作業がやりづらいと感じることもあるはずですが、その場合には外付けディスプレイを増設することで対処できます。
PCについてのまとめは以下のとおりです。
- PCには必ず負荷がかかるので、スペックの高いものを用意するのが望ましい
- 持ち運んだり場所が無い場合にはノート、余裕があればデスクトップがおすすめ
- 高スペックを望むならデスクトップPCを選択すべき
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必要なもの[2]DAWソフト
次に必要となるのが、音楽制作をするためのソフトです。
これらは総称として「Digital Audio Workstation(DAW、ダウ)ソフト」と呼ばれています。
以下に挙げたDAWソフトは、いくつかある中でも特にユーザーが多く有名なものです。
- Logic
- Cubase
- Studio One
- Pro Tools
- GarageBand
ソフトによってはWindowsまたはMacのみでしか使えないもの、そしてどちらのOSでも使えるものがあります。
ソフトによって得意とする分野が若干異なるため、自分が作りたい音楽が定まっている人はそれを目安として選択できると望ましいです。
また、Windowsであれば「Cubase」、Macであれば「Logic」が圧倒的にユーザーが多いため、まったくの初心者で「信頼できるソフトであれば何でもいい」という人はそれらを選択してください。
上記二つはソフト自体の歴史も長いため市販の操作解説本が充実していたり、何かトラブルがあってもネット上に多くの情報が掲載されているため安心です。
▼ 各メーカーのDAWソフトについて詳しく知るには、Wikipediaのページが参考になります。
DAWソフトの価格はメーカーによって差があり、例えば「GarageBand」などはMacに初めからインストールされているため新たに購入する必要がありません。
その他のソフトも、グレードに応じておおむね数万円程度で入手できますが、高品質なソフトには価格が十万円を超えるものもあります。
DAWソフトについてのまとめは以下の通りです。
- DAWソフトにはいくつもの種類があるので、用途に合ったものを選択できると理想的
- 全くの初心者はWindowsであれば「Cubase」、Macであれば「Logic」を選択しておけば安心
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必要なもの[3]スピーカー・ヘッドフォン
次に必要となるのは、音を聴くための「スピーカー」または「ヘッドフォン」です。
音楽制作は文字通り音楽を作る作業であるため、実際に音を聴きながら確認していくことが作業の大半を占めます。
それにあたり、鳴っている音を正確に把握するための機材が必要となります。
音を出せる環境で、設置場所があればスピーカーの購入が検討できますが、その際には音楽制作専用のものを選ぶのが一般的です。
なぜなら、音楽制作専用のスピーカーはオーディオ用のものに比べて周波数特性がフラットな状態に作り込まれており、音楽がリスナーによっていろいろな機器で再生されることを前提として、制作の段階ではクセのない状態で音を作り込んでいくのが望ましいからです。
また自宅での音楽制作において、スピーカーを使わずにヘッドフォンのみを使用して音楽制作をしている人も多く存在しています。
その場合にも、市場に多く出回っているオーディオ用のヘッドフォンではなく、音楽制作用のスピーカーを選択することが望ましいでしょう。
スピーカー・ヘッドフォンも様々な価格帯の商品が存在していますが、品質を考えるとスピーカーで5万円以上、ヘッドフォンで1万円程度のものを選ぶと、初心者の時点では十分に満足できるはずです。
スピーカー・ヘッドフォンについてのまとめは以下の通りです。
- スピーカー・ヘッドフォンのどちらを選ぶ場合も音楽制作専用のものを選択するべき
- できればスピーカーで作業をしたいところ、でも最近はヘッドフォンだけで作業をしている人も多い
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必要なもの[4]MIDIキーボード
PCを使った音楽制作においては、画面上にデータを打ち込んで音楽を作っていくことが多いです。
その際に、いわゆるPCの(文字を打つ)キーボードを使用せず、鍵盤を押さえながら音を入力していくやり方が一般的です。
音楽制作で使用されるデータ入力用の鍵盤を「MIDI(ミディ)キーボード」などと呼び、その他のピアノ/音楽用キーボードと区別しています。
MIDIキーボードはあくまでデータ入力用であるため音源を持っておらず、基本的に単体では発音できません(PCに接続することで、DAWソフトを介して音源を鳴らすことができます)。
入力用のキーボードであるため、いわゆるグランドピアノのように鍵盤数が多いものはあまり見かけず、コンパクトなものがほとんどです。
価格はメーカーや鍵盤数によって変わりますが、2万円以下で入手できるものが多いです。
また、通常の音楽用キーボードをMIDIキーボードとして使用することができる場合もあり、その際にはPCと接続するためにMIDIインターフェース(後述)などが必要になることもあります。
MIDIキーボードについてのまとめは以下の通りです。
- MIDIキーボードは音をデータとして入力するために必要
- 通常の音楽用キーボードで代用できることも多い
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必要なもの[5]MIDIインターフェース・オーディオインターフェース
MIDIインターフェース
前述した「MIDIキーボード」に関連する機材が「MIDIインターフェース」です。
最近ではMIDIキーボード自体にその仕組みが組み込まれていることがほとんどで、多くのMIDIキーボードはUSBケーブルなどでPCと直接接続することができます。
反面でそのような仕組みがない場合にはキーボードの入力をPC接続のために変換する必要があり、その仲介役としてMIDIインターフェースが必要になります。
オーディオインターフェース
また、MIDIインターフェースに似た機材として「オーディオインターフェース」も楽器の録音などに欠かせない機材です。
「オーディオインターフェース」とは文字通りオーディオの入り口となる機材で、通常この機材に楽器やマイクを接続してPCにその音をレコーディングしていきます。
一般的にオーディオインターフェースはUSBケーブルによってPCに接続され、そこに楽器のケーブルやマイクケーブルをつなぎレコーディングすることで、ギターやボーカルの音がDAW上に音声データとして記録されていく仕組みとなっています。
オーディオインターフェースの機能だけを持つもの、またデジタルミキサーを兼ねているものなどいくつかの種類が存在します。
どちらにせよ「楽器の音」や「人間の歌声」などをDAWソフトに記録していくためにはオーディオインターフェースが必要となるため、そのような音楽制作を想定している人には欠かせない機材であるといえます。
価格は数万円からあり、こちらも価格が品質に比例します。
ギターやボーカルのサウンドを綺麗にレコーディングするにはオーディオインターフェースの品質が重要であるため、この点は十分に検討したいところでもあります。
MIDIインターフェース・オーディオインターフェースについてのまとめは以下の通りです。
- 最近はMIDIキーボードから直接PCへUSB接続できるケースも多いが、場合によりMIDIインターフェースが必要になることもある
- オーディオインターフェースには専用のもの、ミキサー一体型のものなどいくつか種類がある
- オーディオレコーディングの品質を重視する場合にはオーディオインターフェース選びを慎重に行うべき
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必要なもの[6]マイク
ボーカルや生楽器をレコーディングするうえでは、マイクが必要になります。
マイクは一般的に「ダイナミックマイク」と「コンデンサマイク」に分けられます。
それぞれに特性がありますが、ボーカル録音には一般的にコンデンサマイクが使用されます。
コンデンサマイクはダイナミックマイクに比べると取り扱いに注意が必要ですが、クリアなサウンドでレコーディングできるところが魅力です。
またダイナミックマイクはいろいろなシーンに活用できて使い勝手が良いため、そちらを愛用している人も多いです。
マイクも数千円から数万円まで幅広い価格のものが存在しますが、こちらもオーディオのレコーディングの品質に大きく関わる機材であるため、慎重に選んでいきたいところです。
マイクについてのまとめは以下の通りです。
- マイクには「ダイナミックマイク」と「コンデンサマイク」がある
- クリアなサウンドを目指すならコンデンサマイク、またダイナミックマイクひとつでも結構いろいろなレコーディングができる
- マイクの品質によってレコーディング時の音は大きく変わるため慎重に選びたいところ
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必要なもの[7]プラグイン(音源)
DAW上での音楽制作に欠かせないのが「音源」です。
個人が所有することのできないような楽器の音を作品に使用するためには、多くの場合ソフト音源が活用されます。
管楽器や弦楽器などはその典型的なもので、アコースティックピアノやウッドベースなどのリアルな音を表現する場合にもこれらを活用することがほとんどです。
またEDM(Electronic Dance Music)などで使用されるシンセサイザーの音などは、ソフト音源ならではのサウンドだといえます。
これらの音源は「プラグイン」という方法で、使用しているDAWソフトに組み込む形で活用されます。
また、一般的なDAWソフト内にはあらかじめいくつかの音源が用意されており、まずはそれらを使用していくこともできます。
ソフト音源の価格は通常数千円から数万円程度で、1万~2万ほどで高品質な音源が手に入ります。
プラグインソフト音源についてのまとめは以下の通りです。
- 所有していない楽器のサウンドやデジタル的なサウンドを表現するためにソフト音源を活用する
- まずはDAWソフトにプリセットされている音源を活用できる
- 自分の作りたい音楽に合わせて、プラグインとしてソフト音源を増設して行く流れが定番
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必要なもの[8]プラグイン(ミキシング・マスタリング)
ソフト音源と共に入手を検討できるのが、ミキシングおよびマスタリングに使用するためのプラグインソフトです。
音楽制作の多くを占めるのが「ミキシング」の作業で、そこではレコーディングした音の音量や音質を整え、聴きやすくしたり音に迫力を出すために作り込んでいきます。
その際に活用するのが「ミキシングエフェクト」と呼ばれる機能で、レコーディングした音にそれらの効果を加えながら、画面上で値を変化させ音を調整します。
ソフト音源と同様にミキシングエフェクトもDAWソフト内にあらかじめ用意されていることがほとんどですが、より高品質で使いやすいものを求めてプラグインとしてそれらを入手することが検討できます。
また、同じようにミキシング後にある「マスタリング」という工程のためにもソフトが必要となります。
ミキシング・マスタリングプラグインは、本格的にミキシングに取り組む場合や、DAWソフトにプリセットされているものに満足できなくなった際に必要になるもの、ともいえます。
価格もソフト音源と同じく数千円から数万円程度ですが、特にミキシング・マスタリングは音源の仕上がりにつながる大事な工程であるため、品質を重視して高価なものを選択するケースも多いです。
ミキシング・マスタリングプラグインについてのまとめは以下の通りです。
- 作った音楽を仕上げるために必要な工程が「ミキシング」「マスタリング」
- 音源と同じくDAWソフトにプリセットされているものを活用できる
- より高品質で使いやすいものを求めてプラグインを購入することが多い
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すべて揃える場合の費用目安
ここまでにご紹介した機材を、費用の目安と共に改めて一覧にすると以下のようになります。
- PC(パソコン)⇒5~10万円程度
- DAWソフト⇒1~5万円程度
- スピーカー・ヘッドフォン⇒1~5万円程度
- MIDIキーボード⇒5000円~3万円程度
- MIDIインターフェース・オーディオインターフェース⇒1万~3万円程度
- マイク⇒5000円~3万円程度
- プラグインソフト音源⇒1万円~5万円程度
- ミキシング・マスタリングプラグイン⇒1万円~5万円程度
これらを全てを揃える場合には、安価なものを選んだとしても10万円前後の費用が必要になります。
また、高品質なものを入手しようとするほど高額になってしまうため、必要となる環境を一度整理することをおすすめします。
PCなど既に持っているものを活用することもできます。また、現在ではフリーのDAWソフトも充実しているため、それらを活用する場合には費用は3万円以下で済むはずです。
まとめ
ここまで、PCを使った作曲に必要なもの(機材)を詳しく解説してきました。
冒頭でもお伝えした通り、本来「作曲」という行為はピアノ一台でも行われてきたものですが、最近ではPCやスマホでの音楽制作を「作曲」と捉えることも多くなってきています。
PCでの音楽制作を希望される場合は、上記を参考になるべく自分の理想に合った機材の入手を検討してみて下さい。
また、「音楽制作」という大げさなものではなくもっと手軽に曲作りを楽しみたいという方は、ピアノ・キーボードなどの鍵盤楽器があればすぐにでも作曲を始めることができます。
以下の記事を是非参考にしてみて下さい。
なるべく小規模から始めて、徐々に拡張させていくことをおすすめします。
補足
上記で述べた内容に関連して、必要なものを揃えたあと実際どのようにして作曲に取り組み、どう上達させていくべきか、という点について以下のページで解説しています。
ポップス・ロック作曲の上達につながる「曲分析ガイドブック」について知る
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