こちらのページでは、作曲や音楽の演奏をする際によく耳にする「スケール」という言葉の意味とその種類などについて解説していきます。
「スケール」の概要
スケール(scale)とは、簡単にいえば「音の並び方」を指す言葉で、日本語では「音階」などとも訳されます。
どんな音をどんな間隔で選ぶか
ピアノの鍵盤(以下図)を見るとわかるとおり、そもそも音には「白鍵:7個」+「黒鍵:5個」=12個の種類しか存在していません。
上記図にあるように、それぞれの音は実際のところ等間隔で並んでいるような状態となっており、これは「1オクターブが12等分されている」とも解釈できます。
このページでテーマとしている「スケール」は、言い方を変えると
「この12音のうちからどんな音を選ぶか」を定義するもの
だといえます。
「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の仕組み=メジャースケール
スケールを理解するためには、既に図として示した「ピアノの白鍵」に相当する「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」をイメージするのが一番簡単です。
上記は、既にご紹介した鍵盤の図に、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の音階を書き込んだものです。
これを見ると、私たちが子供の頃からなにげなく親しんできたこの音の集合体が、12等分された1オクターブの中でこのような順番(配置)によって並んでいるものだということがわかります。
この音の並び方は、スケールの種類のひとつである「メジャースケール」に相当するもので、数多くあるスケールのうちでも特に代表的なものとして扱われています。
メジャースケールの内容とその覚え方、割り出し方、なぜ必要なのか?について
スケールはなんらかの雰囲気を感じさせるもの
では、なぜ「スケール=音を選ぶ・並べる」という観点が必要になるかといえば、その理由は簡単にいえば「音の集合体からなんらかの雰囲気を感じられるようにするため」です。
上記の例では、全12音のうち「メジャースケール」という概念によって音を選ぶことで、そこから
- まとまりのある雰囲気
- メジャースケールならではの整った雰囲気
が感じられるようになります。
等間隔で並んでいるだけの12音をただ無計画に鳴らすと、そこからはめちゃくちゃな雰囲気が生まれてしまいます。これは、ピアノの鍵盤を適当に弾くとめちゃくちゃな音楽になってしまうことからもわかります。
スケールは「並び方」
スケールを理解するうえで忘れてはいけないのが、それがあくまで「並び方(=音の選び方)」を指す、ということです。
これをわかりやすくするために、以下に「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の起点(中心音)である「ド」の音を「一番目:I」として、それ以降の音の並び方をローマ数字によって表した図を示します。
「スケール」という言葉の意味するところはここにあり、それは「枠組み/尺度」のようなものとして働きます。
つまり、上記の例でいえば「メジャースケール」は
「『ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ』の雰囲気が感じられる音の並び方」
でしかないため、同じことを例えば「ファ」を起点として行うことができてしまうのです。
以下はそれを図にしたものです。
上記図を見るとわかるように、「ファ」を起点として音をメジャースケール(=「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の雰囲気が感じれらる枠組み)に当てはめると、そのメンバーは
ファ・ソ・ラ・ラ#・ド・レ・ミ
となります。
メジャースケールの枠は変わらないため、起点が変わることで音のメンバーが変わり、必然的に何らかの音に「シャープ」「フラット」などの調号が付くことになります。
本来、「ファ」を起点としたメジャースケールでは、シャープの付いた「ラ#」を「シ♭」と表現するのが一般的です。
これによって
「ファ」から始めた「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の雰囲気
が感じられるようになり、これを「Fメジャースケール」などと呼びます(F=ファ)。
このように、スケールは通常さまざまな音を起点(中心音)として、そのスケールの枠組みに沿って音を選び、さまざまな音によってそれを表現するものだと理解して下さい。
補足:「枠」や「尺度」のような意味合いを持つ言葉
英語の「scale」という言葉には
- 物差し
- 規模や大きさ
などの意味もあり、それらが「枠」や「尺度」のようなニュアンスを持っていることを考えると、音楽における「スケール」が「並び方=枠組み」を意味することがなんとなく理解できるはずです。
ここまでのまとめ
以下はここまでのまとめです。
- 「スケール」とは「音の並び方=全12音のうちからどんな音を選ぶか」を意味する言葉
- 「スケール」の概念によって、音の集合体からなんらかのまとまりが感じられる
- ポップス・ロックにおいては、音使いからなんらかの雰囲気を感じられるようにするため、この「スケール」の概念が活用される
いろいろなスケール
ここまでを通して音楽における「スケール」という言葉の意味が理解できたはずですが、実際のところスケールにはさまざまな種類があります。
これは、言い方を変えれば
「12音のうちから、さまざまな音の選び方ができる」
ということで、「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」を含め、それぞれのスケールには独特な響きがありさまざまな効果を狙ってそれらが音楽で活用されています。
基本的な概念は「メジャースケール」と同じでそれらはあくまで「並び方」であるため、既に述べたとおり起点(中心音)を変え、本来いろいろな音によって表現されます。
ここでは、その中でも特に代表的なものをいくつかご紹介します。
※例として、すべてのスケールの起点を「ド(C)」にしています。これらは本来「C〇〇スケール(「Cメジャースケール」など)」と呼ばれるものです。
※起点(中心音)を赤丸で示しています。
1. メジャースケール(アイオニアンスケール)
まずひとつめに挙げられるのが「メジャースケール」で、これは前述したとおり「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の並び方に相当するものです。
既に述べたように数あるスケールのうちで最も有名かつ重要な存在で、多くの人が認識する「キー(メジャーキー・長調)」の概念はこの「メジャースケール」によって成り立つものです。 キー(音楽)について キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉
2. ナチュラルマイナースケール(エオリアンスケール)
ふたつめに挙げられるのが「ナチュラルマイナースケール」で、これはメジャースケールにある「第3音」「第6音」「第7音」を半音下げたもの、ともいえます。
またこれはメジャースケールの「第6音」を起点として、「6,7,1,2,3,4,5」のように並べたものと同じ構造を持ちます。
メジャースケールと同じく、「マイナーキー(短調)」の概念はこのスケールによって成り立ちます。 マイナースケールの解説 ハーモニックマイナー・メロディックマイナーを含む三種について
3. ハーモニックマイナースケール
次に挙げられるのが「ハーモニックマイナースケール」で、これはナチュラルマイナースケールの「第7音」を半音上げて、和声的な不自然さを矯正したスケールです。
詳しくは、上記でご紹介している「マイナースケール」に関するページで解説しています。
4. メロディックマイナースケール
上記でご紹介した「ハーモニックマイナースケール」の「第6音」を半音上げて旋律的な不自然さを矯正したスケールも存在しており、これを「メロディックマイナースケール」と呼びます。
「メジャースケールの『第3音』のみを半音下げたスケール」、とも解釈できます。
5. ドリアンスケール
メジャースケールの「第2音」を起点とした「2,3,4,5,6,7,1」のような音の構造を持つのがこの「ドリアンスケール」です。
メジャースケールが「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」の雰囲気が感じられる並び方だったのに対し、このドリアンスケールは「レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」の雰囲気が感じられる並び方だといえます。
「メジャースケールの『第3音』と『第7音』を半音下げたスケール」、とも解釈できます。
6. フリジアンスケール
ドリアンスケールと同じような調子で、メジャースケールの「第3音」を起点とした「3,4,5,6,7,1,2」の構造を持つスケールを「フリジアンスケール」と呼びます。
こちらは「ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ」の雰囲気が感じられる音の並び方、ともいえます。
7. リディアンスケール
上記の例と同じくメジャースケールの「第4音」を起点とした「4,5,6,7,1,2,3」という音の構造を持つスケールを「リディアンスケール」と呼びます。
前述の二例と似たような形で、こちらは「ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ」の雰囲気が感じられる並び方です。
「メジャースケールの『第4音』のみを半音上げたスケール」、とも解釈できます。
8. ミクソリディアンスケール
こちらの「ミクソリディアンスケール」はメジャースケールの「第5音」を起点とした「5,6,7,1,2,3,4」という構造を持つスケールです。
こちらは「ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ」の雰囲気を感じる音の並び方で、「メジャースケールの『第7音』のみを半音下げたスケール」とも解釈できます。
9. ロクリアンスケール
メジャースケールの「第7音」を起点として「7,1,2,3,4,5,6」と並べた構造を持つスケールは「ロクリアンスケール」と呼びます。
こちらは「シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ」の雰囲気が感じられる音の並び方です。
10. メジャーペンタトニックスケール
次に挙げられるのが「メジャーペンタトニックスケール」で、これはメジャースケールのうち「第4音」と「第7音」を省いたものです。
これまでにご紹介したものとは違い、このスケールは全5音から成り立っています。
11. マイナーペンタトニックスケール
ナチュラルマイナースケールのうち「第2音」と「第6音」を省いたスケールを「マイナーペンタトニックスケール」と呼びます。
こちらも全5音によって成り立つスケールです。
12. ディミニッシュスケール
起点となる音から「全音→半音」という規則に沿って音を選んだスケールを、「ディミニッシュスケール」と呼びます。
このスケールは全8音によって成り立ちます。
13. コンビネーションオブディミニッシュスケール
上記「ディミニッシュスケール」と似たようなやり方で、起点となる音から「半音→全音」という規則に沿って音を選んだスケールを「コンビネーションオブディミニッシュスケール」と呼びます。
長いスケール名を略して「コンディミ」などと呼ばれることもあり、こちらも全8音によって成り立ちます。
14. ホールトーンスケール
起点となる音からすべて「全音」の間隔で音を選んだスケールを「ホールトーンスケール」と呼びます。
このスケールは全6音によって成り立っています。
15. クロマチックスケール
(もはやスケールとは呼びづらいですが)「1オクターブ内にある12個の音すべてを選ぶスケール」というものも存在しており、これを「クロマチックスケール」と呼びます。
その他のスケール
上記で挙げたもの以外にも、民族系のスケールを含めると世界にはさまざまなスケールが存在しています。
以下のページでは、それらについても詳しく紹介されています。
まとめ
ここまでスケールの意味と代表的なスケールの種類についてご紹介してきましたが、
「全12音からの音の選び方」
という観点だけでも、本当にさまざまなスケールが存在することがわかります。
これらを意図的にメロディラインやコードに活用し、そこからさまざまな曲調や演奏のスタイルを生み出すことができます。
是非楽器を弾きながら、各種スケールの響きを体感してみて下さい。
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