私はこれまで25年以上作曲をしてきていますが、その中では数多くのコード譜を書き、また読んできました。
この点に関して、以前に下記の投稿をしています。
これは私が書いたコード譜の例ですが、作曲をしていてコードを書き留めるときにはこのように小節線で区切って、なるべく縦を揃えるようにするのがおすすめです。これをやるとコードの割り当て具合や各ブロックの長さが瞬時に把握できて、いろいろなことを検討しやすくなります🙂 pic.twitter.com/I6xzXpX3Bg
— うちやま|作曲の先生 (@sakkyoku_info) September 4, 2020
ここで述べている通りコード譜の書き方にはいくつかのポイントがあり、「作曲」ということを前提とするとそれが作品の品質向上にもつながります。
こちらではそんな「コード譜の書き方」について、いくつかの視点から詳しくご紹介していきます。
目次
コード譜の書き方(基本となる三点)
まず、上記の投稿にも添付していた、私の書いたコード譜を改めて例としてご紹介します。
これを書くうえでポイントとなるのは以下の三点です。
- 「A」「B」などのブロックに分けて書く
- コードを小節線で区切る
- 小節線を縦に揃える
そもそも、ひとえに「コード譜」といってもそれを「自分用」に書くのか、または自分以外の誰かが見ることを前提として書くのかによって力の入れどころが変わってきます。
上記はこのうち「自分が自作曲を確認するために書いたコード譜」に分類されますが、ここで挙げている三点はいずれにせよ必ず守るべきポイントだといえます。
それぞれについて、これ以降で詳しく解説します。
1. 「A」「B」などのブロックに分けて書く
まず一つ目が、「コードをブロックごとに分けて書く」という点です。
上記の画像にある通りコード譜には「A」「B」などの記号を書き入れ、ブロックの起点を必ず明確にします。
この「A」「B」などを、音楽用語で「リハーサルマーク」などと呼びます。
こうすることによって
- 曲がどんなブロック構成によって成り立っているか
- それらがどこで切り替わるか
が瞬時にわかるようになります。
コードをブロックに分けて書く具体的な利点
上記で述べた通り、コードを「A」「B」などのブロックに分けて書くことで、簡単にいえば曲の構成がひと目でわかるようになります。
これは、具体的には
- 各ブロックが何小節によって成り立っているか
- 各ブロック冒頭のコードは何か
- 各ブロックでコードがどんな種類によって、どうつながっているか
- 全部でいくつのブロックが、どんな順番でどうつながっているか
などがすぐに把握できるようになる、ということです。
ここから、例えば作曲においては
- 「サビを他のブロックよりも長めにしてみよう」
- 「AメロとBメロそれぞれに使われているコードを明確に変えてみよう」
- 「ブロック冒頭のコードをそれぞれ違うものにしてみよう」
- 「サビの後に短くAメロを入れてみよう」
などのようなことが検討できます。
言い方を変えると、ブロックごとに分けて書くことによって各ブロックを差別化して聴きごたえのある曲構成を作ることがより簡単になる、ということです。
2. コードを小節線で区切る
次に挙げられるポイントは「コードを小節線で区切って書く」という点で、これは主に
コードの拍数=ひとつのコードがどのような長さで鳴らされるか
を把握しやすくするためのものです。
上記画像にあるように、各コードを小節線で区切ることによって、1小節=四拍(四拍子の場合)の中でコードがどう存在しているかが視覚的にわかります。
また以下の画像で示すように、例えば(1)の場合には、1小節の中に「A」と「E」の二つが存在しているため、
1小節(四拍)の中で、コードが「A」から「E」に切り替わる
ということがわかります。
反面で(2)の場合には1小節の中に「A」のコード一つしかないことから
1小節(四拍)中でコードは切り替わらず、「A」のみ
だということがわかります。
3. 小節線を縦に揃える
上記に付随する三つ目が「小節線を縦に揃えて書く」という点です。
このコード譜では、Aメロ~サビへとコードが書き連ねられていながらも、小節線の縦のラインがある程度揃えられています。
コードを小節線で区切り縦を揃えて書く具体的な利点
前述した「小節線で区切る」という点、およびそれらを「縦に揃える」という点は、具体的には「各ブロックにおけるコードチェンジの具合」を把握するのに役立ちます。
改めて上記画像にあるコード譜を見ると、
- Aメロ、サビは小節の中にコードが沢山詰め込まれている
- Bメロはそれらに比べてコードの数が少ない
ということが瞬時にわかります。
これは、つまり
AメロからBメロへと場面転換したことでコードチェンジの回数が抑えられている=コードが切り替わる速度が弱まっている(Bメロ→サビはその逆)
ということを意味します。
コードチェンジが頻繁に行われるとせかせかした感じが強まり、反対にコードチェンジがあまり行われないと、どっしりとした感じのサウンドになります。
実際の作曲では、例えば以下のようなコード譜を目にした場合、それに応じた対応ができるようになります。
「全部のブロックでコードチェンジのタイミングが似た感じになっているコード譜」
→メリハリが少ないからそれぞれを違う感じにしよう
「Aメロにおけるコードの切り替えが多いコード譜」
→導入部分のサウンドはもっとどっしりとさせたいからコードチェンジを減らそう
コード譜の書き方(自分以外の人に見せるためのコード譜)
そもそもコード譜は、
曲の構成をコードと共にわかりやすく把握する
ということを目的とするものであるため、基本的には上記に挙げた三点を満たしていれば、ある程度その役割を果たせると考えられます。
反面で、それを「自分以外の人に見せること」を前提とすると、主に以下のような配慮がさらに必要となります。
- 曲の情報をより具体的に示す
- 見やすい
- 誤解させないようにする
これらは、具体的には、
- 曲のテンポやキーを表記する
- 小節の配置を見やすくする
- 反復記号を用いたコンパクトな表記を心掛ける
- 誤解させないコード表記を徹底する
などの点をコード譜に反映させることにつながります。
以下は、それらを踏まえたコード譜の例です。
それぞれについても、ここで簡単に触れておきます。
1. 曲のテンポやキーを表記する
まず、自分以外の人がコード譜を目にした際にすんなりと演奏がイメージできるよう、曲のテンポやキーを併記できると理想的です。
上記コード譜に書かれている通り、「BPM=Beats Per Minute」と呼ばれる演奏の速度を四分音符で表したり、また直接的に「BPM=100」のように書くことも出来ます。
キーについては、直接「キー=C」のように表記すれば問題ありません。
キーの表記については転調などの曲展開を考慮すると難しい面もありますが、その場合にはそれらも含めて併記できるとより親切です。
2. 小節配置の見やすくする
音楽は、「偶数」を基本として展開していくものと捉えられており、中でもブロックは
- 4小節
- 8小節(4小節×2)
- 16小節(4小節×4)
などによって構成されることが多く、一般的なマナーとして1行を4小節でまとめると「見やすいコード譜」と認識されやすくなります。
上記にあるように、コード譜全体を「1行に4小節」と決めて組み立ててしまうことでコードの並びが揃い、それぞれの関係性を把握しやすくなるケースも多いはずです。
もちろん、上記にあたらない小節数(6小節、2小節)などによって構成されているブロックも存在するはずですが、その際には間を詰めたり、思い切って余分な小節を「×」印で消すなどの対応ができます。
3. 反復記号を用いたコンパクトな表記を心掛ける
一般的な楽曲はイントロからアウトロまでかなりの小節数を有するため、すべてをコード譜に書き表すと相当な枚数となってしまいます。
演奏や録音の現場など、何度もそれを見るような状況を想定するとあまり使い勝手がいいといえないため、それを踏まえて反復記号を活用することがほとんどです。
上記画像の赤丸で示したのがその一例で、特に「リピート記号」や「D.S.=ダル・セーニョ」「コーダ」などはその代表的なものです。
これらを活用して、なるべくコード譜そのものがコンパクトにまとまるよう作るのが一般的です。
この点は通常の五線譜と同じであるため、以下のようなサイトを確認することでその理解を深めることができるはずです。
4. 誤解させないコード表記を徹底する
コード譜には紛らわしい表記も多く、自分以外の人が見るコード譜ではそのような誤解を避ける配慮も必要です。
例えば、「Cメジャーセブン」というコードには「CM7」という表記方法がありますが、これを、似たような表記を持つ「Cm7(Cマイナーセブン)」と取り違えてしまうことが想定できます。
「Cメジャーセブン」を「C△7」や「Cmaj7」などと表記したり、分数コードを「G/B」のようにせず「GonB」と表記すること、などはその一例です。
コード譜の書き方まとめ
ここまでにいくつかの点を解説してきましたが、既に述べた通り、コード譜の基本的な役割は
曲の構成をコードと共にわかりやすく表記する
という点にあります。
基本的にはここが満たされていれば問題ありませんが、そのうえで、
などが満たされているとより理想的です。
こちらで挙げた例などを参考に、是非わかりやすく見やすいコード譜になるよう心掛けながら、コード譜を書いてみて下さい。