【作曲】アウトロの作り方|曲の終わらせ方のコツや例をビートルズの曲をサンプルとして解説します。

作曲をやっていると

曲をどのように終わらせるか?

という点に思いのほか迷ってしまうものです。

ポップス・ロックなどにおいてはその「曲の終わり部分」を「アウトロ」などと呼びますが、こちらではそんな「アウトロ」の作り方やパターン例などについてご紹介していきます。

アウトロで「良い曲だった」と感じてもらう

ここでテーマとしている「アウトロ=outro」に明確な定義はありませんが、

  • イントロ=in
  • アウトロ=out

ということで、「イントロ=曲の始め方」と対になるものとして捉えると、アウトロをどのようなものにすべきかが見えてきます。

つまり、

イントロ=「曲との向き合い方」を考えて作るもの

であるのに対し、

アウトロ=「曲の収め方」を考えて作るもの

だといえます。

より簡単にいえば、アウトロによって

「ああ良い曲だった!」

とリスナーに感じてもらうことが、アウトロを作るうえでの根本的な方針となります。

※イントロの作り方については、以下のページにて解説しています。
【作曲】イントロの作り方|ビートルズの曲を例に挙げてイントロのパターンを解説します。

アウトロ制作方針の一覧

以下は、上記を踏まえたアウトロ制作の一般的な方針を一覧にしたものです。

  1. 曲の盛り上がりを維持しながら曲を終わらせる
  2. 曲の展開を落ち着かせ、静かな雰囲気によって締めくくる
  3. 新たな展開を提示して最後まで多彩なサウンドを楽しんでもらう

それぞれについて簡単に解説します。

1. 曲の盛り上がりを維持しながら曲を終わらせる

こちらはアウトロの典型的な例ともいえるもので、盛り上がった曲の勢いをアウトロによって保持しながら曲を締めくくるケースのことを指します。

曲終盤付近のサビの伴奏をそのまま繰り返してアウトロとするようなケースなどは、こちらにあたります。

また、その曲の象徴的なフレーズ(リフなど)をアウトロで繰り返して、盛り上げながら曲に統一性を持たせることも検討出来ます。

アウトロを短くしたり、アウトロ自体を無くすこともできる

「盛り上がりを維持する」という観点からアウトロを短いものとしたり、そもそもアウトロ自体を無くしてしまうことも検討できます。

これは「アウトロの作り方」というテーマからはずれてしまいますが、目的もなく散漫なアウトロを聴かせるくらいなら、スパっと曲を終わらせてしまう方がより効果的です。

check
探してみると、アウトロが短い曲・アウトロが無い曲は思いのほか多いものです。

2. 曲の展開を落ち着かせ、静かな雰囲気によって締めくくる

また、既に述べたようにアウトロは「曲を収める」という役割を持つため、アウトロで展開を落ち着かせて、静かなサウンドを提示することも多いです。

具体的には、演奏の勢いを意識的に弱めたり、メロディやコードの切り替わりを少なくし、動きの少ないものとして作り込むやり方がとられます。

曲によってはテンポそのものを緩めたり、使われている音色を意図的に減らしたりすることもできますが、このあたりは編曲的な観点によるものともいえるでしょう。

3. 新たな展開を提示して最後まで多彩なサウンドを楽しんでもらう

アウトロを作るうえでもう一つの方針となるのが、新たな展開を聴かせるやり方です。

通常アウトロは、上記で挙げたようにそれまでの曲展開を受け継ぎ、流れを活かしたうえで作り込まれるものです。

それを前提として、このやり方はアウトロをひとつの場面と捉え、そこで場面転換をさせるように新たな雰囲気をリスナーに感じさせます

check
アウトロまで新たな展開が続くことで、リスナーは最後まで曲を楽しむことができます。

結果として、それが聴いた後の満足感や「良い曲だった」という印象をもたらすことになります。

アウトロの具体的な手法

これ以降は、ビートルズの楽曲をサンプルとしながら、上記三つの方針を踏まえた具体的なアウトロ制作の手法を探っていきます。

1. アウトロを短くする(または無くす)

まず、既に述べた通りアウトロを極力短いものとしたり、状況に応じてアウトロ(と呼べるほどきちんとしたブロック)を曲の最後に設けないやり方が検討できます。

この手法は前述した「曲の盛り上がりを維持する」という観点から活用されることがほとんどです。

サンプル曲(1)「All My Loving」


こちらの曲は、日本のポップス・ロックでいうところの

A→B

という二つのブロックによって成り立つ形式を持った曲です。

曲の締めくくりにあたる「2分04秒」あたりには、上記Bメロに相当する部分が歌われていますが、そこから何の前触れもなく曲は終わってしまいます

このように、サビのメロディや構成そのものに力がある場合にはそれを曲の終盤で繰り返し、そのまま突然曲を締めくくってしまうこともできます。

サンプル曲(2)「Ask Me Why」


こちらも前述した「All My Loving」と同じくアウトロが無い例で、「2分17秒」あたりで曲は余韻も少なく突然終わってしまいます

check
原理も前述したものと同じで、サビにあたるフレーズを何度か繰り返し、その流れの中で曲が締めくくられていきます。

ポイントとなるのはサビそのものに若干の繰り返し部分を入れ、「アウトロ用のサビ」のような形としてアレンジを加えている点です。

ここで例としている「アウトロを短くする・無くす」という手法をよりスムーズに実施するうえでは、このようになんらかの仕掛けを直前に盛り込むことも望ましいといえるでしょう。

サンプル曲(3)「I Me Mine」


こちらも同じくアウトロが無い例です。

曲は「2分15秒」あたりに、その直前で歌われていたブロックを中断するような形で終了します。

前述した二つの例が「サビ」と感じられるメロディを繰り返してきちんと曲を締めくくっていたのに対し、この例ではあえて中途半端な部分で曲を終わらせているようにも感じられます。

「アウトロを無くす」というアイディアはこのように、「中断させる」という観点から意外性につなげるためにも活用できることがわかります。

サンプル曲(4)「With A Little Help From My Friends」


こちらは、ごく短いアウトロが設けられている例です。

「2分35秒」あたりでサビのフレーズが繰り返され、その繰り返しの中でコードのサウンドが微妙に変化することで曲は締めくくられます。

check
メロディの無い部分が二小節程度盛り込まれており、短いながらも一応それをアウトロだと捉えることができます。

長めに作り込んだブロックの締めくくりをそのままアウトロとしてしまう

この例では、終盤のサビを少しだけ長めに作り込み、コードの流れを落ち着かせるように締めくくっています。

その締めくくりの部分がそのままアウトロになっているような形ですが、それによりそこまでの展開を受け継ぎつつ、違和感のない形でアウトロを盛り込むことができています

「アウトロを作らなきゃ」と堅苦しく考えなくても、このような手法によって自然にそれを実現することができるはずです。

2. サビなど(アウトロ直前にあるブロック)の雰囲気を維持して終わる

次にご紹介するのが、サビなど、直前にあるブロックの雰囲気を引き継いで大きめのアウトロを聴かせるやり方です。

これも「曲の盛り上がりを維持する」という点を意識したものです。

サンプル曲(5)「Hey Bulldog」


この例では、「2分13秒」あたりから本格的なアウトロが始まります。

そこで演奏されているのは本作のリフにもなっているフレーズで、イントロおよびサビの終盤に同じものが盛り込まれています。

リフをそのまま長く繰り返してアウトロにする

アウトロへは、その直前にあるサビのリフを引き継ぐ形で突入しており、サビでの怪しげなムードや演奏の勢いがそのまま保たれ、そこから長くアウトロが繰り返されます。

このように、サビのムードをそのまま引き継ぐやり方はスターンダードでありながら、「盛り上がりを維持する」という観点からは最も簡単で、かつ効果的だといえます。

3. イントロを再度提示して終わる

次にご紹介するのは、アウトロにおいてイントロの構成を再度提示するやり方です。

これにより、イントロとアウトロで同じフレーズが盛り込まれる形となり、曲に統一感が生まれます

また、通常イントロは落ち着いたものに作り込まれていることが多いため、前述した「静かな雰囲気によって締めくくる」という方針をこれによって満たせることもあります。

サンプル曲(6)「And I Love Her」


ここでは「2分10秒」あたりにアウトロが登場します。

扱われているのはイントロでも聴くことができたフレーズで、リードギターによるシンプルなフレーズは上記で述べた「静かな雰囲気」を持っています。

イントロのフレーズをそのままアウトロにも使うだけ

この例で用いられているのは「イントロのフレーズをアウトロにも使う」というアイディアだけです。

それなのに、アウトロとしての説得力が感じられ、サウンドも変わらないことから自然な雰囲気が感じられます。

曲のイントロ(リフ)としてこのように落ち着いたフレーズが扱われている場合には、この手法によって、統一感を持たせつつ曲をゆっくりと締めくくることができるはずです。

サンプル曲(7)「When I’m Sixty Four」


こちらも前述した「And I Love Her」と同じく、シンプルで落ち着いたイントロフレーズをアウトロに仕込んでいる例です。

「2分30秒」あたりから始まるアウトロはどこかコミカルですが、イントロから通して一曲を聴くことで同じフレーズが最後にもあることで全体が一貫性のある構成だと感じられます。

イントロと同じ雰囲気をアウトロでも扱うことで、きちんと締めくくられる印象を与えることができるとわかります。

サンプル曲(8)「Come Together」


この例でも、イントロやAメロにおける伴奏をアウトロに盛り込んでいます。

アウトロが始まるのは「3分15秒」あたりで、こちらも同じくそれがリフのような働きをしていることから、曲が統一感のあるものに感じられます。

この例のように、ひとつのコードを繰り返すようなフレーズがイントロ等にある場合には、それをアウトロにも無理なく活用することができます。

4. 違った雰囲気を提示して終わる

最後にご紹介するのは、前述した「新たな展開」をアウトロによって演出するやり方です。

サンプル曲(9)「Ticket To Ride」


この楽曲におけるアウトロは「2分48秒」以降で、そこでは

「My baby don’t care~」

というフレーズと共に、それまでに無かった新たな展開が始まっています。

アウトロ専用のメロディと歌詞を新たに登場させる

アウトロで扱われているのは上記で述べた専用の歌詞と、それまでに登場していなかった新たなメロディです。

それらを何度も繰り返し、フェードアウトさせる形で曲は締めくくられていきます。

このようにアウトロを特別なものとして作り込み、意外性のある展開によって曲を終わらせることもできます。

サンプル曲(10)「Strawberry Fields Forever」


こちらもアウトロとしてそれまでに無い展開を盛り込んでいる例で、「3分2秒」あたりからその流れが始まります。

こちらは完全に場面転換しているような効果を生んでおり、それまでと雰囲気の違うアウトロをこのように長く盛り込むことで、曲の後半に新たな曲がつなげられたようにも感じられます

場面転換の手法はこのようにさまざまで、アイディア次第でアウトロによっていろいろな曲展開を演出することができるはずです。

まとめ

ここまで、アウトロの作り方やその例などについて解説してきました。

アウトロ制作の具体的な手法を、改めて以下の通りまとめます。

  • アウトロを短くする、または無くす
  • サビなど直前の雰囲気を流用する
  • イントロを再度提示する
  • 違った雰囲気を提示する

これらを参考にしつつ、是非効果的なアウトロの形を探ってみて下さい。

適切なものが思い浮かばない場合には、いさぎよくシンプルに終わらせてしまう、というのも一つの方法です。

ポップス・ロック作曲の上達につながる「曲分析ガイドブック」について知る

作曲がぐんぐん上達する「曲分析ガイドブック」のご紹介ページ