こちらでは、作曲初心者のかたに向けて「作曲に使えるコード進行の定番パターン」をご紹介します。
私はこれまで実務で7000曲ほどコード譜を制作してきましたが、ヒット曲や名曲には定番といわれるコード進行が本当によく使われており、それらはシンプルでありながら心に響く音楽を作るための土台になると自分自身の経験から痛感しています。
定番を理解することが良い曲を作るための近道にもなるため、是非これらを作曲に活用してみてください。
目次
作曲に使えるコード進行の定番10パターンのまとめ
まずはじめに、作曲に使える定番のコード進行10パターンをキー別にまとめて、以下に一覧として示します。
以下、すべては「定番となる10パターンのコード進行を、同じ構造のまま各キーに移調した一覧」です。
キー=Cメジャー
- C→F→G
- C→Am→Dm→G
- C→G→Am→Em
- C→Em→Am
- F→G→C
- F→G→Am
- F→G→Em→Am
- Dm→G→C
- Dm→Em→F→G
- Am→F→G→C
キー=Gメジャー
- G→C→D
- G→Em→Am→D
- G→D→Em→Bm
- G→Bm→Em
- C→D→G
- C→D→Em
- C→D→Bm→Em
- Am→D→G
- Am→Bm→C→D
- Em→C→D→G
キー=Dメジャー
- D→G→A
- D→Bm→Em→A
- D→A→Bm→F#m
- D→F#m→Bm
- G→A→D
- G→A→Bm
- G→A→F#m→Bm
- Em→A→D
- Em→F#m→G→A
- Bm→G→A→D
キー=Aメジャー
- A→D→E
- A→F#m→Bm→E
- A→E→F#m→C#m
- A→C#m→F#m
- D→E→A
- D→E→F#m
- D→E→C#m→F#m
- Bm→E→A
- Bm→C#m→D→E
- F#m→D→E→A
キー=Eメジャー
- E→A→B
- E→C#m→F#m→B
- E→B→C#m→G#m
- E→G#m→C#m
- A→B→E
- A→B→C#m
- A→B→G#m→C#m
- F#m→B→E
- F#m→G#m→A→B
- C#m→A→B→E
キー=Bメジャー
- B→E→F#
- B→G#m→C#m→F#
- B→F#→G#m→D#m
- B→D#m→G#m
- E→F#→B
- E→F#→G#m
- E→F#→D#m→G#m
- C#m→F#→B
- C#m→D#m→E→F#
- G#m→E→F#→B
キー=Fメジャー
- F→B♭→C
- F→Dm→Gm→C
- F→C→Dm→Am
- F→Am→Dm
- B♭→C→F
- B♭→C→Dm
- B♭→C→Am→Dm
- Gm→C→F
- Gm→Am→B♭→C
- Dm→B♭→C→F
キー=B♭メジャー
- B♭→E♭→F
- B♭→Gm→Cm→F
- B♭→F→Gm→Dm
- B♭→Dm→Gm
- E♭→F→B♭
- E♭→F→Gm
- E♭→F→Dm→Gm
- Cm→F→B♭
- Cm→Dm→E♭→F
- Gm→E♭→F→B♭
キー=E♭メジャー
- E♭→A♭→B♭
- E♭→Cm→Fm→B♭
- E♭→B♭→Cm→Gm
- E♭→Gm→Cm
- A♭→B♭→E♭
- A♭→B♭→Cm
- A♭→B♭→Gm→Cm
- Fm→B♭→E♭
- Fm→Gm→A♭→B♭
- Cm→A♭→B♭→E♭
キー=A♭メジャー
- A♭→D♭→E♭
- A♭→Fm→B♭m→E♭
- A♭→E♭→Fm→Cm
- A♭→Cm→Fm
- D♭→E♭→A♭
- D♭→E♭→Fm
- D♭→E♭→Cm→Fm
- B♭m→E♭→A♭
- B♭m→Cm→D♭→E♭
- Fm→D♭→E♭→A♭
キー=D♭メジャー
- D♭→G♭→A♭
- D♭→B♭m→E♭m→A♭
- D♭→A♭→B♭m→Fm
- D♭→Fm→B♭m
- G♭→A♭→D♭
- G♭→A♭→B♭m
- G♭→A♭→Fm→B♭m
- E♭m→A♭→D♭
- E♭m→Fm→G♭→A♭
- B♭m→G♭→A♭→D♭
キー=G♭メジャー
- G♭→B→D♭
- G♭→E♭m→A♭m→D♭
- G♭→D♭→E♭m→B♭m
- G♭→B♭m→E♭m
- B→D♭→G♭
- B→D♭→E♭m
- B→D♭→B♭m→E♭m
- A♭m→D♭→G♭
- A♭m→B♭m→B→D♭
- E♭m→B→D♭→G♭
動画解説もあります
「文章ではよくわからない」という方に向けて、動画でも解説を行っています。
定番のコード進行10パターンの構造解説
上記でご紹介した定番のコード進行10パターンについて、その構造とアレンジ例をご紹介します。
1.「I→IV→V」
まずひとつめが、ダイアトニックコードにおける「一番目」「四番目」「五番目」を連結したコード進行で、「キー=Cメジャー」でいうところの、
C→F→G
がそれにあたります。
作曲においてコード進行を考えるにあたり、そのよりどころとなるのは「ダイアトニックコード」と「機能」「度数」等の概念です。
▼関連ページ ダイアトニックコードとスリーコード 概要や成り立ち、コードの役割などについて
上記ページでも述べているとおりダイアトニックコードの中でも「スリーコード」と呼ばれる三つのコードは特に主要なものとされていますが、こちらの構成はそのスリーコードを単につなぎ合わせただけコード進行だと解釈できます。
この構成はコード進行の基本ともいえるもので、これらを四和音(セブンスコード)によってアレンジした
CM7→FM7→G7
や、一部に「サブドミナントマイナー」と呼ばれるダイアトニックコード外のコード(ノンダイアトニックコード)を盛り込んだ
C→Fm→G
のような構成もアレンジ例として挙げることができます。
セブンスコードの解説 コードに「7度」の音を含む四和音、その成り立ちと詳細について サブドミナントマイナー(コード) その概要と使い方
2.「I→VIm→IIm→V」
ふたつめは、ダイアトニックコードにおける「一番目」「六番目」「二番目」「五番目」を連結した構成で、これは「キー=Cメジャー」いうところの
C→Am→Dm→G
にあたります。
ポイントとなるのは「サブドミナント」の役割を持つコードとして「IIm(キー=CメジャーにおけるDm)」が扱われている点です。
これにより、この構成中にある
「VIm→IIm→V」
というコードの流れが全て強進行(完全4度上進行)になり、コードのつながりに強い説得力が生まれます。
このような構成は「循環コード」として、ループ構成を持つ曲の作曲にも活用されています。
「VIm(Am)」を「VI(A7)」に置き換え、
「I→VI7→IIm→V(C→A7→Dm→G)」
のようにしたコード進行も、強進行を維持したまま「セカンダリードミナントコード(VI7)」の特徴的な響きを盛り込めるため、比較的よく耳にすることができます。
強進行について(通称「4度進行」=ドミナントモーションの元になる力強い音の動き) 循環コードの詳細と成り立ち・派生形や「逆循環コード」についての解説など セカンダリードミナントコード 成り立ちとその表記などをわかりやすく解説します
3.「I→V→VIm→IIIm」
三つ目はダイアトニックコードにおける「一番目」「五番目」「六番目」「三番目」をつなげた構成で、これを「キー=Cメジャー」で表すと
C→G→Am→Em
というコード進行となります。
ダイアトニックコードにおける五番目のコードは扱いに注意が必要で、むやみに配置してしまうことで不自然な響きが生まれてしまいます。
そのうえで、この例にある「I→V…」のように「一番目=トニック(主和音)」からの連結は自然な響きをもつ構成として許容できて、このような展開は「カノン進行」などと呼ばれるクラシカルなコード進行にも多く使われています。
▼関連ページ カノン進行によるコードのつなげ方と例 定番のコード進行とそのアレンジについて
カノン進行のアレンジについて、詳しくは上記ページを参考にしてみて下さい。
4.「I→IIIm→VIm」
上記で既に例として挙げた「I→V→VIm→IIIm」に似たものがこちらの構成で、ここではダイアトニックコードの「一番目」「三番目」「六番目」が連結されています。
「キーCメジャー」でいうところの
C→Em→Am
という構成がそれにあたりますが、ここにある三つのコードすべてが「トニック=安定」の響きを持つため、全体的に落ち着いた響きが生まれているところが特筆すべき点だといえます。
上記でご紹介した「カノン進行」にも通じる作曲のアレンジとして、中間の「IIIm(Em)」を転回形の分数コードにして、
C→EmonB→Am
のようにすることで、ベースラインを
C(ド)→B(シ)→A(ラ)
という形で、スムーズな流れによってつなげることができます。
分数コード (オンコード、スラッシュコード)詳細と主な種類、代表的な活用方法などについて
5.「IV→V→I」
ひとつめにご紹介したスリーコードのみの構成は、この例のように中間から始めることもできます。
ここでは、ダイアトニックコードの「四番目」→「五番目」→「一番目」の順にコードがつなげられており、「キー=Cメジャー」における
F→G→C
というコード進行がそれにあたります。
「サブドミナント」の機能を持つ四番目のコードは動きを感じさせるコードでもあるため、実際の作曲ではこの例のようにそれをコード進行の冒頭に配置して、展開に躍動感を持たせるように構成させることも多いです。
6.「IV→V→VIm」
上記で挙げた「IV→V→I」のアレンジ版ともいえるのがこちらの構成で、「キー=Cメジャー」では
F→G→Am
となります。
スリーコードの構成を予感させつつ、五番目のコード(ドミナントコード、G)からあえてトニックの代理コードである六番目のコード(VIm、Am)に展開することで、リスナーに「程良い裏切り」のような印象を与えることができます。
このようなコード進行のまとめ方は、クラシック音楽の用語で「偽終止(ぎしゅうし)」などとも呼ばれるものです。
終止の詳細とその種類(全終止・偽終止・アーメン終止・サブドミナントマイナー終止など)
7.「IV→V→IIIm→VIm」
上記でご紹介した「IV→V→VIm」をさらにアレンジしたのがこちらの構成で、ダイアトニックコードにおける「四番目」→「五番目」→「三番目」→「六番目」の順でコードがつなげられています。
「キー=Cメジャー」の例では
F→G→Em→Am
のようなコード進行となりますが、前述した「偽終止」の拡張版としてこちらもいろいろな楽曲で頻繁に扱われています。
ここでの「IIIm(Em)」を「III7(E7)」にした
F→G→E7→Am
のようなコード進行も、既にご紹介した「セカンダリードミナントコード」を盛り込んだアレンジの例として挙げることができます。
8.「IIm→V→I」
前述した、スリーコードのみによる構成「IV→V→I」のアレンジ版ともいえるのがこちらで、ここではダイアトニックコードの「二番目」「五番目」「一番目」がつなげられています。
「キー=Cメジャー」において
Dm→G→C
となるこのコード進行は、別名で「ツーファイブワン」(二番目→五番目→一番目)などとも呼ばれ、特にジャズや、都会的なサウンドを持つポップス・ロックの作曲などで頻繁に扱われます。
このコード進行では、以下のようにいくつかのアレンジパターンが想定できます。
- Dm7→G7→CM7
- Dm7(9)→G7(13)→CM7(9)
- D7→G→C
ツーファイブとは?(概要と基本的な成り立ち、活用方法、マイナーキーにおける例など)
9.「IIm→IIIm→IV→V」
ダイアトニックコードにおける「二番目」から「三番目」、そこから「四番目」→「五番目」と順番にコードをつなげるような構成も定番のコード進行として作曲に活用されており、「キー=Cメジャー」でいうところの
Dm→Em→F→G
というコード進行がそれにあたります。
大きな流れとして「サブドミナント→ドミナント」という響きの移り変わりが生まれており、コード進行全体に動的な雰囲気があるところが特徴のひとつとだいえます。
直線的な動きを持つこのような構成では「パッシングディミニッシュコード」の活用が効果的で、全音程の関係にあるルートの間を埋めるように、
「Dm→Em→F→F#dim→G」
のようにコードをアレンジすることも想定できます。
ディミニッシュコード 概要と使い方などの解説・パッシングディミニッシュ・セブンス置換
10.「VIm→IV→V→I」
最後に挙げているのが、ダイアトニックコードにおける「六番目」「四番目」「五番目」「一番目」を連結したコード進行で、「キー=Cメジャー」では
Am→F→G→C
というコード進行となります。
構造を紐解くと、スリーコードのみによる展開をサブドミナントから始めた「IV→V→I」という流れに「VIm」が加えられたものとして解釈できます。
代理コードにあたる「VIm」から始められたコードの展開がトニック「I」に向かってつながり締めくくられる、という心地良さがあります。
「6451」型のコード進行の解説(通称:小室進行) 親しみやすさの考察と既存曲の例
まとめ
以下に、上記でご紹介した「作曲に使えるコード進行」を改めてまとめます(カッコ内は「キー=Cメジャー」での例)。
- 「I→IV→V(C→F→G)」
- 「I→VIm→IIm→V(C→Am→Dm→G)」
- 「I→V→VIm→IIIm(C→G→Am→Em)」
- 「I→IIIm→VIm(C→Em→Am)」
- 「IV→V→I(F→G→C)」
- 「IV→V→VIm(F→G→Am)」
- 「IV→V→IIIm→VIm(F→G→Em→Am)」
- 「IIm→V→I(Dm→G→C)」
- 「IIm→IIIm→IV→V(Dm→Em→F→G)」
- 「VIm→IV→V→I(Am→F→G→C)」
これらを構造として理解し、さまざまなキーにおいて活用できるようになることを目指してみて下さい。
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