メロディ分析の方法 メロディのどんなところに着目して分析を行うべきか

先日SNSにて、

「メロディ分析ってどのように行うのでしょうか??コード分析は分かるのですが…」

という質問を受けました。

確かに、「メロディを分析する」といわれてもいまいちやることが見えず、具体的にどんな観点から作業を進めていけばいいかがはっきりしないものです。

そこで、こちらでは、私自身が普段のレッスンで生徒さんにお伝えしている内容をもとに、効果的な「メロディ分析」の方法について解説していきます。

是非、この内容を普段の曲分析作業に役立てていただきたいです。

メロディ分析の概要

まず、実際にメロディを分析していくにあたり着目すべき点を以下に挙げます。

  1. メロディの音使い(コード構成音、スケール)
  2. メロディのリズム(音符の種類、ノリ等)
  3. メロディの音階(順次進行、跳躍進行)
  4. メロディの始め方(同時、前、後)
  5. メロディの大きさや配置

これらはメロディを形成する要素ともいえるもので、このあたりについて理解を深めることが、必然的にメロディについての理解を深めることにつながっていきます。

それぞれについて、これ以降で詳しく解説していきます。

1. メロディの音使い(コード構成音、スケール)

まず、メロディの分析として着目すべきは

どのような音使いをしているか

という点です。

以下は、メロディの例です。




例えばこのようなメロディを分析の対象とする場合、メロディには

シ、ド、レ、ミ

の四音が使われている、ということが読み解けます。

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ここでは例として五線譜およびDAWのピアノロール画像を載せていますが、これらが無い場合(音源のみの場合)には、実際にメロディの音を楽器などで確認する必要があります。

コード構成音とメロディの関係

メロディの音名が明らかになったら、それを「コード構成音との関係」の観点からより突っ込んで考えます。

こちらの例では、メロディに対して

C(ドミソ)→Em(ミソシ)

というコードがつけられているため、

C Em
ドーレミー

というメロディの割り当て具合から、

  • メロディで長く伸ばす音はコードの構成音に含まれている
  • コードが始まる前から鳴っている音(シンコペーション)もある

などのことがわかります。

▼関連ページ シンコペーションとは?(「食う」と表現されるリズムの成り立ちをわかりやすく解説)

構成音のうち、どの音にあたるか

メロディをコード構成音の観点から分析するにあたり、

コード構成音のうちどんな音を主に活用しているか

という点を確認することで、コードに対するメロディの響き方をより具体的に捉えることができます。

そもそも、コードは基本的に以下のようないくつかの音によって形成されています。

  • ルート音(1度)=「C(ドミソ)」でいう「ド」の音
  • その他の音(3,5,7,9度など)

▼関連ページ 【コード(和音)とは?】 音楽で扱われている「コード」はどのように成り立っているか?を考える

例えばコード「C=ドミソ」は、

  • ド=1度
  • ミ=3度
  • ソ=5度

という三音によって成り立っていますが、上記で挙げたメロディの例では

「(シ)ドー」

と伸ばしている音が、その伴奏になっているコード「C」の「1度の音」だということがわかります。

そこから、

「ああやっぱりコードの1度(ルート音)をメロディに使うと安定した雰囲気が生まれるんだなあ」

というような確認ができるはずです。

構成音の持つ性格を感覚的に把握する

本来メロディは複雑に入り組んでおり、上記の「1度」の例以外にも、コード構成音のうちさまざまな音がそこに活用されています

そのため、分析結果と聴覚上の感想を重ね合わせると、

  • コードの1度の音をメロディに使うと安定した感じになる
  • コードの5度の音によるメロディも1度に似た安定感を生む
  • コードの3度の音を使ったメロディはどことなく浮遊感がある

などの感覚が持てるようになっていきます。

それを、実際の作曲に活かすと、

  • メロディに安定感を出したい→コードの1度の音を使ってみよう
  • どことなくオシャレな雰囲気を出したい→コードの3度の音から始めよう

という検討ができるようになっていきます。

スケールとメロディの関係

上記で述べた「コード構成音」以外にも、「その曲のキーが持つスケール」に相当する音はメロディで当然のように活用されます。

上記の例では、「C=ドミソ」というコードの上に

ドーレ…

というメロディが乗っており、ここでの「レ」が

  • 「C」の構成音に含まれていない音
  • 「キー=C」のスケールの音(ドレミファソラシ)

にあたります。

本来コード構成音に無い音がメロディで強く押し出されると違和感が生まれるものですが、このように瞬間的に通り過ぎていく場合には問題なく許容できるものです。

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この例における「レ」の音は、音楽的に「経過音」と呼ばれるものです。

このような「スケール」の観点をあわせることで、メロディ全体の音を何らかの観点から意味づけて把握していくことができます

2. メロディのリズム(音符の種類、ノリ等)

続いて分析できるのが、

メロディがどのような音符(長さ)によって成り立っているか

という点です。

ここで、改めて前述のメロディ例を以下に示します。



この例では、

  • 4分音符
  • 2分音符
  • 8分音符

などがメロディに含まれています。

ここから、

  • 2分音符の部分では「ターン…」と音が伸びている
  • 8分音符によって中間で刻む部分もある

などのことが分析結果としてわかります。

メロディがどんなノリを生んでいるか

この分析は、平たくいえば「メロディがどんなノリを持っているか」を確認する作業です。

例えば、8分音符を打ち鳴らす以下のようなメロディは、メロディが「タタタ…」と刻まれて、そこからにぎやかなノリが生まれます。



前述のメロディ例と違って、8分音符のみによってメロディが形成されていることから、どことなく無機質な印象も受けます。

また、以下は4分音符のみによって形成されたメロディの例です。



上記「8分音符のみ」のメロディに比べて、メロディ自体が淡々と進んでいくような雰囲気を持っていることがここからわかります。

このように、メロディに使われる音符の種類や、その組み合わせ方によってメロディが持つノリ(リズム的な印象)は大きく変わります。

音符の種類と組み合わせによるメロディの操作

この分析を通して「音符の種類」と「メロディのノリ」の関係が理解できると、例えば作曲において、

  • にぎやかな雰囲気を持ったメロディにしたい→8分音符を主体として、そこにいくつか音符を混ぜてみよう
  • 無機質な印象を与えるメロディにしよう→音符の種類は1種類にして、音を刻もう

というような検討ができるようになります。

メロディを意図したものに仕上げる際、既に解説した「どんな音を使うか」という点以上に、この「メロディのリズム的構造」は重要であるため、分析結果を

音符の種類→メロディの持つリズム→どんな印象をそこから受けるか

という点まで掘り下げられると理想的です。

3. メロディの音階(順次進行、跳躍進行)

メロディに使われている音は「進み方=音階」という観点からも分析できます

例えば、以下のメロディは「ド→レ→ミ→ファ…」とスケールの音を順番に上っていくような構成によって成り立っているものです。



音階の変化がなだらかであるため、実際にメロディを聴くとそこからはスムーズな雰囲気が感じられます。

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このように、音階を順番にたどるような音の進み方を、音楽的に「順次進行」などと呼びます。

反面で、この例ではメロディのすべてがその観点によって成り立っており、どことなくインパクトに欠ける印象も受けます

それ以外にも、例えば以下のメロディは音階の幅を広げ、音をスケールの中にある離れた音に進めるように組み立てたものです。



前述の「順次進行」の例に比べて音階の変化が大きくなり、どことなくメロディアスで華やかな雰囲気がそこから感じられます。

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この「離れた音」に進ませるやり方は、音楽的に「跳躍進行」などと呼ばれるものです。

▼関連ページ 「順次進行」「跳躍進行」の解説と、それらを活用したメロディ作りのアイディア

「順次」「跳躍」が生む雰囲気

ここで取り上げている「音階」という観点は、前述した「音符の種類」と同じく、メロディを構造で捉えるためのものだといえます。

既に述べた通り、

  • 「順次進行」=スムーズ、反面でインパクトに欠ける
  • 「跳躍進行」=華やか、使い過ぎるとギクシャクする

などの特徴を持っていますが、そもそも「心地良い流れ」を演出するため、多くのメロディは順次進行を中心として組み立てられているものです。

そのうえで、跳躍進行はそこに個性を加えるように活用されることが多いです。

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特に、ポップス・ロック等のボーカル曲では「歌いやすい」という点からメロディには順次進行が多く活用され、それを前提として跳躍進行をそこに盛り込むかが聴きごたえのあるメロディを作るうえでポイントとなります。

メロディを聴いてそこから実際に受ける印象とそれらを照らし合わせ、音階の進み具合(「順次」と「跳躍」の組み合わせ)と共にそれを把握できると理想的です。

4. メロディの始め方(同時、前、後)

前述した「メロディのノリ」は「始め方」によっても変わるもので、そのような観点を分析に加えることができます。

▼関連ページ 作曲のコツ|ブロック冒頭におけるメロディの始め方に気を配り印象を操作する

例えば、既にご紹介した以下のメロディは、冒頭にあるコード「C」の伴奏よりもわずかに前からメロディが始まっています



それによって、冒頭部分のメロディに少し勢いが付いていると感じられます。

また以下はその反対に、冒頭に休符を置いて小節の後からメロディを始めた例です。


[/box] メロディ冒頭にわずかな空白を挟むことで、少しだけ落ち着いた雰囲気が生まれています

このように、小節冒頭におけるメロディの始め方は

  • 同時
  • 前から
  • 後から

の三種類に分けられ、メロディ分析においてそのような点を確認することで、それらがどのような効果を生んでいるかを確認することができます。

ブロックごとに始め方を変える

この三種の始め方は、基本的に以下のような印象をリスナーに与えます。

  • 同時=メロディが弾けるようにはっきりと始まる
  • 前から=メロディが先取りされて勢いを持って始まる
  • 後から=メロディがどっしりとした落ち着きを持って始まる

分析しているメロディをそのような観点から捉え、その印象を感覚的に整理しておくのが主な目的といえます。

また、上記でご紹介した別ページでも述べているように、この「メロディの始め方」の観点は、基本的に「Aメロ」「サビ」などのブロック冒頭において気にすべき内容です。

分析を「ブロック冒頭のメロディ」という観点で行い、例えば

  • 「Aメロは『同時』でメロディが始まっている」
  • 「サビは『前から』でメロディが始まっている」

というように比較できるとよりその理解を深めることができるはずです。

5. メロディの大きさや配置

最後にご紹介するのが「メロディの大きさ、配置」という観点からのメロディ分析です。

この点において、以前にSNSでも以下のように述べています。

コードに対してメロディを当てはめるときには、この画像にある1~4のように「どんな大きさのメロディにするか」という観点を持つことが大事。これは、メロディがどう区切れてどうつながっていくかを考える、ということです。この点に気を配ることでメロディが与える印象を操作することができます

このように、メロディは既に述べた「音名」「リズム」「音階」などに加えて、全体的な長さや他メロディを含めた配置具合からも分析できます。

この投稿にある画像のように、

  • メロディがどんな長さを持っているか
  • コードに対してメロディがどう配置されているか

を考え、それが全体としてどんな効果を生んでいるか、という観点で捉えることによって、メロディを効果的に展開させていく感覚を養えます

曲分析ガイドブック

以下のページでは、より総合的に曲を分析するための「曲分析ガイドブック」についてご紹介しています。
作曲がぐんぐん上達する「曲分析ガイドブック」のご紹介ページ

メロディ作りに強くなる本

メロディ作りのコツについて、「メロディ作りに強くなる本」というコンテンツとしてまとめています。 「メロディ作りに強くなる本」のご紹介

まとめ

ここまで、メロディ分析の方法について具体的に解説してみました。

改めて、分析の観点を以下にまとめます。

  • メロディの音使い(コード構成音、スケール)
  • メロディのリズム(音符の種類、ノリ等)
  • メロディの音階(順次進行、跳躍進行)
  • メロディの始め方(同時、前、後)
  • メロディの大きさや配置

これらを通してメロディの成り立ちに対して理解を深め、それをメロディ作りの上達につなげてみて下さい。

メロディを構造で捉える、ということが分析をするうえでのポイントとなります。