メロディ作りはまぎれもなく作曲の中心的作業であり、それゆえに、
- 「作ったメロディがいまいちな感じがする…」
- 「メロディのどこをどう直せばいいかわからない…」
- 「メロディをもっとより良いものにブラッシュアップしていきたい…」
というような悩みを持つ方は多いはずです。
こちらではそんな時に確認できる、
「いまいちなメロディを改善するためのチェックポイント(改善案)」
をいくつか挙げてみます。
目次
1.モチーフ
まずひとつ目に確認できるのが「モチーフ」についてです。
モチーフの概要
「モチーフ」とは、わかりやすくいえば「メロディ展開のきっかけとなる(中心的な)フレーズ」を意味するような言葉です。
一般的なポップスやロックを含む多くの曲では、モチーフとなる短めのフレーズをきっかけとして、それを関連づけながら展開させることで大きなメロディを成り立たせていることが多いです。
以下にその例として、童謡「森のくまさん」のメロディを示します。
上記楽譜上にて赤枠で示しているように、このメロディをフレーズごとに分解して確認すると、冒頭にある
「あるーひ…」
というフレーズがきっかけとなり、そこから音数が増え、また音階が少し変わりながら直後の
「もりのなか…」
というフレーズが生み出されているとわかります。
またそれ以降も同じようなパターンによって、何らかのかたちで直前のフレーズを引き継ぎながらメロディの展開が続いています。
ここでいう
「あるーひ…」
のフレーズが「モチーフ」に相当するもので、一部に微妙な変化を加えながらもそれが繰り返されることによって、メロディ全体からは統一感が生まれています。
そこから、リスナーはメロディの聴きどころがわかり、また全体の構造をすんなりと把握しやすくなることで、メロディから親しみやすさを感じることができます。
モチーフの有無を確認し、全体を関連づける
上記を踏まえ、いまいちだと感じているメロディをモチーフの観点によって紐解き、
- なんらかの中心的なフレーズ(=モチーフ)によってメロディ全体が関連づいているか?
- メロディが散漫でダラダラと展開していくような状態になっていないか?
- 聴きどころがよくわからない(どのフレーズが主体になっているかが見えづらい)メロディになっていないか?
などを確認してみて下さい。
そして、そのような状態を改善するためにモチーフと呼べるような短めのフレーズを設け、前述した森のくまさんのそれを繰り返しながら展開させ、メロディ全体を関連づけるように修正することが検討できます。
より具体的には、
- モチーフをそのまま繰り返す
- モチーフの形を維持しつつ音を少し変えながら繰り返す
- モチーフの音を維持しつつ形を少し変えながら繰り返す
- モチーフに音を付け加えて伸ばしながら繰り返す
- モチーフから音を減らして縮めながら繰り返す
などのやり方によって、モチーフを活用しつつ繰り返しを加えながら大きく展開させることができます。
一般的にモチーフが反映される部分は4小節から8小節などの数小節程度になることがほとんどであるため、メロディの展開によってまた新たなモチーフが登場し、その部分から別のモチーフを主体としてメロディが新たに関連づいて展開することになります。
同様に、時としてモチーフがないメロディ(あえてメロディが関連づかずに次々と展開していく部分)も想定できます。
2.空白
ふたつ目に確認できるのが「メロディの中にある空白」についてです。
音を減らす、という観点
作曲者の多くは、「音を加える」という観点ばかりを重視してメロディを作ってしまいがちです。
その一方で「音を減らす」という観点も重要で、それによりメロディの中に空白が設けられ、空白がある部分からはゆったりとした雰囲気が生まれます。
空白がない部分では音が詰め込まれるかたちになってより多彩な雰囲気が生まれますが、それら双方によってメロディには緩急がついてそこからメロディのメリハリが生まれます。
主体とならない部分においては少し空白を多めに入れてゆったりとした雰囲気を作り、一方で「ここは盛り上げたい」という部分では意図的に空白をなくし音を詰め込むことで、多彩な雰囲気を出しながらメロディ全体としてのメリハリを生み出すことができます。
メロディの中における空白の有無を確認し、緩急をつける
上記を踏まえ、
メロディの中に空白があるか?(=空白がなく音が敷き詰められ続けるようなメロディになっていないか?)
を確認してみてください。
そのうえで、メロディの音があまりにも敷き詰められているような状態にある場合には、一部にあえてはっきりとした空白部分(メロディがなくなるところ)を盛り込むよう修正をすることが検討できます。
特に、曲の導入部分やサビの中間などにはメロディが休まる部分を設けやすく、それ以外にも、作っているメロディに合った空白の入れどころが見つかるはずです。
慣れないうちは、「メロディの音を抜くこと」に対して抵抗を感じるはずですが、既に述べた通り「音を加える」だけでなく「音を減らす」という発想によってメロディにメリハリが生まれることを考慮し、このような修正も検討してみてください。
3.躍動感
いまいちなメロディの改善策として三つ目に確認できるのは、メロディの躍動感についてです。
ここでの「躍動感」とは、具体的には、
- メロディが持つ「音の起伏」
- メロディが持つ「活き活きとしたリズム」
を指します。
初心者にありがちなケース
作曲に慣れていない頃には、メロディ作りを
- 同じ音を「ドードードー…」のように連続させる
- 同じ長さの音符を「タタタタタ…」のように連続させる
という発想によって進めてしまうことが多く、それによって、
ただ単に同じ音がひたすら連打されるだけの、動きが少ないメロディ
が生み出されることになります。
結果としてメロディからは地味な雰囲気が生まれ、それが「いまいち」という印象につながってしまいます。
メロディの躍動感を確認して、音の起伏と多彩なリズムを盛り込む
このような傾向を踏まえて、
- メロディの中に音の上下がきちんと盛り込まれているか?
- メロディが多彩なリズム(音符)によって成り立っているか?
を確認することができます。
そのうえで、なるべくメロディを上下させるようにしたり、メロディが持つリズムを「タタタタ…」という単調なものばかりではなく、例えばいくつかの音符を組み合わせてリズミカルな雰囲気が出るように修正することが検討できます。
もちろんこのような観点も全てのメロディに対して徹底する必要はなく、例えば
- サビは躍動感のあるメロディになっている
- Bメロの冒頭部分には同じ音を単に連打するだけのメロディがある
というように、曲の展開に合わせてさまざまな表情を持ったメロディを配置できるとより望ましいです。
より突っ込んでいえばあえて躍動感のないメロディを強調することもできますが、このあたりは曲調やその曲が与えるべき印象を踏まえて最適な形を探っていけると望ましいです。
4.「歌のメロディ」らしさ
メロディの改善案として四つ目に確認できるのが「歌のメロディらしさ」についてで、これはポップス・ロックなどの歌のある曲の作曲を前提とするものです。
歌は制約が多い
そもそも、歌のメロディには以下のような制約があります。
- 歌いづらい音程の変化がある(広すぎる音程、特定の度数の音程変化など)
- 歌いづらいリズムがある(テンポが速すぎる、音の刻みが細かすぎるなど)
- 息継ぎをする必要がある(適度な休みが必要)
これらを無視して歌のメロディを作ることは、そのまま「歌いづらいメロディ」を作ることにつながってしまい、そこから歌のメロディとしての不自然な雰囲気が生まれてしまいます。
メロディをきちんと声に出して歌いながら作っている限りは、必然的に歌い心地の良いメロディだけが採用されるためこのようなケースは回避できます。
一方で、例えばDTMなどによってメロディを机の上で作ってしまう場合にはこのような状態に陥りやすいため注意が必要です。
「歌メロとして自然かどうか」を確認して、歌い心地の良いメロディに修正する
これを踏まえ、
メロディが、歌のメロディとして自然か?(=歌うことに無理がないか?)
という点を確認してみてください。
一部に不自然なメロディがあった場合には、
- メロディの音程変化が(基本的には)なだらかな波を描くようにする
- 最適なテンポと歌いやすい音の刻み具合によってメロディのリズムを作る
- メロディの中間に息継ぎができる部分(=空白)を盛り込む
などの観点によって修正を検討できます。
DTMなどで曲作りを進めるうえでも作ったメロディを必ず歌うようにして、上記で述べたような観点をもとに
- 歌いやすいか
- 歌い心地が良いか
- 歌として無理がないか
などを常に確認しつつメロディを組み立てていけば、おのずと歌として自然なものになっていきます。
5. キー(コード)との調和
いまいちなメロディの改善案として最後に確認できるのが「キー(コード)との調和」についてです。
音楽はキーの音使いによって成り立っている
大前提として、音楽には「キー」という概念があり、
- 中心となる音
- (それを含む)主に扱われる7音
に使う音を絞ったうえで、それらを活用しながら曲は組み立てられます。
▼関連ページ
これはメロディとコード進行においても同じで、基本的には、
- メロディには「キーの音」
- コードには「キーのダイアトニックコード」
を扱いながらそれぞれを組み立てることで、両者を調和させながら、「キー」という音の組織の中でまとまりのある雰囲気を生み出していくことができます。
メロディとコード進行がキーの音およびダイアトニックコードによって組み立てられているかを確認する
これらを踏まえ、
- 特定のキーが定められてるか
- メロディがそのキーの音を使って組み立てられているか
- コード進行がそのキーのダイアトニックコードを使って組み立てられているか
などを確認してみてください。
そもそも、曲作りをするうえで事前にキーを定め、そのキーにおける音の組織を感じながらメロディやコード進行を組み立てる場合には、自然とそれらはキーの音を活用する方向でまとまっていくはずです。
そのうえで、稀にキーの音を超越するようなメロディが生み出され、その部分に違和感を感じてしまうことがあります。
そのような場合にはキーの音に収まるようメロディを修正したり、また部分的にキーを変える(=転調する)ことなどが検討できます。
▼関連ページ
メロディ作りに強くなる本
メロディ作りのコツについて、「メロディ作りに強くなる本」というコンテンツとしてまとめています。 「メロディ作りに強くなる本」のご紹介
まとめ
以下は、ここまでに述べた「いまいちなメロディを改善するためのチェックポイント」のまとめです。
- モチーフがあるか?
- 空白があるか?
- 躍動感があるか?
- 歌メロらしさがあるか?
- キー(コード)と調和しているか?
既に作り終えたメロディがいまいちな仕上がりだと感じている場合、これらについて確認したうえで、より聴きやすく、魅力的なメロディになるような修正を検討してみてください。
また、根本的にメロディ作りに正解は無く、何を持って「良いメロディ」とするかは曲調やどのような曲にするかという作曲の方針によっても変わります。
これを踏まえると、しかるべきメロディを見極めるための
「メロディ作りの感覚・判断力」
のようなものを磨くべきで、それによって作っている曲のメロディに対する自分なりの正解を導き出していけるようになります。
そのためには日頃からいろいろな曲のメロディに触れ、それらを構造的な観点から分析することが有効です。
メロディ分析によって得た感覚や分析力・判断力を自分の曲にも活用し、作曲を繰り返すことで、メロディ作りの上達を目指してみてください。
分析を通してメロディについて理解を深めるほどに多彩なメロディを生み出せるようになっていきます。
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