Bメロの作り方(作曲においてBメロでメロディやコード進行を作るためのコツについて)

日頃から作曲の先生として活動していると、

Bメロをどう作ればいいのかがわかりません
という声をよく耳にします。

確かに、曲の顔となるサビや導入部のAメロに比べるとBメロは存在が曖昧で、いざ作ろうとしてもどう進めていいか迷ってしまうものです。

というわけで、こちらではそんなBメロの作り方について、より具体的に解説していきます。

是非曲作りの参考にしてみて下さい。

前提:曲形式について

まず、前提として曲には「形式」という概念があります。

▼関連ページ
Aメロ・Bメロ・サビなどの意味と、それらを活用した「曲の形式」の例

上記ページでも解説している通り、楽曲は同じ雰囲気を持ったメロディやコードをひとつのまとまりとして聴かせ、そのブロックを展開させることでストーリーを演出します。

さまざまな曲において、ブロックのつながりや場面転換にはいくつかの決まったパターンがあり、中でもポップス・ロックでは主に以下二つの曲形式がよく活用されています。

  1. A-B-C(サビ)
  2. A-B

1.「A-B-C(サビ)」型

近年のポップスで最もよく活用されているのが、「Aブロック」「Bブロック」「Cブロック」という三つのブロックが順番に登場して切り替わっていく形式です。

冒頭でご紹介した「Bメロをどう作ればいいのかわからない」という方の多くは、こちらの形式におけるBメロの作り方に頭を悩ませていることがほとんどです。

このアレンジ型として、曲の冒頭にサビを配置して「つかみ」としたり、Bメロを二段構えのようにしたり、というやり方もあります。

2.「A-B」型

前述の「A-B-C(サビ)」型が大きく三つのブロックを持っていたのに対し、こちらは主に「A」「B」という二つのブロックにより曲を構成させる形式を指します。

それぞれのブロックを「表と裏」「明と暗」のように、相対するものとして作り込むやり方は、洋楽などでよく見られます。

また「B=サビ」として捉え、「A-B-C(サビ)」型をコンパクトにしたものとして作り込むこともできます。

「A-B-C(サビ)」型におけるBメロの作り方詳細

ここからは、主に前述した二つの形式のうち、多くの人が取り組んでいる「A-B-C(サビ)」型におけるBメロについて考えていきます。

Bメロの方針をきちんと立てる

「A-B-C(サビ)」型におけるBメロは、導入部である「Aメロ」と、曲の中で最も盛り上がるブロック「サビ」の中間に位置しています。

Bメロを制作する際には、まず

「Bメロの存在をどのようなものとして捉えるか」

という方針を立てることが大切で、それによりやるべきことが若干変わります。

この点について、主に以下のような方針を検討することができます。

  • 「A」の流れを適度に引き継いで「サビ」へのつながりを演出する
  • 「A」とはまったく違ったものとして「B」を演出する

「場面転換」について

上記二つの方針を考えるうえで共通するのが「場面転換」の概念です。

「Bメロ」というひとつのブロックを聴かせる場合には、いずれにせよそこに場面転換の意図が含まれ、それをどう演出するかがBメロを作る際の鍵となります。

また、上記で挙げた方針のそれぞれは

「場面転換の度合いを大きくする/小さくする」という観点を持つこと

とも言い換えることができます。

ブロックを構成する要素を変えると場面転換が明確になる

場面転換は、そのブロックにおいて行われていること(ブロックを構成する要素)が変わるほど明確になります。

以下は、「ブロックを構成する要素」の一例です。

  • 使われているコードの種類
  • コードチェンジのタイミング
  • コード進行ひとまとまりの大きさ
  • メロディの音階
  • メロディのリズム
  • メロディの始め方
  • メロディの大きさ
  • ブロック全体の大きさ
  • 空白の数

例えば、「キー=Cメジャー」の曲におけるAメロが

「C→F→G」
というようなコード進行で始まっていた場合、次なるBメロの冒頭を同じように
「C→F→G」
で作り込んでしまうと、AメロとBメロの始まり方に違いが感じられず曲がBメロに展開したことを明確に示せません。

それとは反対に、例えばBメロ冒頭を

「Dm→Em→F」
のように作り込めばそこでAメロとは違った響きが生まれ、それまでとは違うブロックに展開したことをより強くリスナーに伝えることができます。


これ以降では、既にご紹介した

  • 「A」の流れを適度に引き継いで「サビ」へのつながりを演出する
  • 「A」とはまったく違ったものとして「B」を演出する

という二つの方針それぞれについて、より詳しく考えていきます。

1.「A」の流れを適度に引き継いで「サビ」へのつながりを演出する

まず、多くの曲で導入されているのが「『A』からの流れを適度に引き継ぐ」という方針です。

これは、具体的には

Bメロのメロディやコード・曲調などにある程度Aメロとの共通性を持たせ、Aメロの雰囲気を引継いで盛り上げつつサビへ展開させるやり方

のことを意味するものです。

これは言い方を変えれば、Bメロを「橋渡し」のような存在として捉えること、ともいえるでしょう。

キーを維持しつつコードを変える

大半の曲がそうであるように、この場合のBメロでは、Aメロからの流れを引き継ぐため曲のキーが維持されます

つまり、これは

「同じキーのダイアトニックコードにあるコードを使うこと」

につながりますが、ここでポイントとなるのが前述した「場面転換」で、Aメロからの流れを引き継ぎつつもBメロに切り替わったことはっきりと提示すべきであるため、Bメロの冒頭で使われるコードは基本的に変えるべきです

中でもコードの機能を変えると場面転換はより明確になります。

これは、具体的には

Aメロ冒頭はダイアトニックコードの一番目(I)のコード=トニックの機能を持つコードを使っている

Bメロ冒頭では四番目(IV)のコード=サブドミナントの機能を持つコードを使うようにする

というような観点によってコードを選ぶことを指します。

▼コードの機能について、詳しくは以下のページでも解説しています。
ダイアトニックコードとスリーコード(概要や成り立ち、コードの役割などについて) 代理コードについて マイナーコードをスリーコードのかわりに活用する

特にBメロは展開部であり、反面でサビやAメロの冒頭がトニック(I)で作り込まれることが多いため、Bメロ冒頭にはそれと違った機能を持つ「サブドミナント」のコード(「IV」や「IIm」=「キー=Cメジャー」における「F」や「Dm」)が使用されることが多いです。

要素を変えつつ、ある程度の共通性も持たせる

これ以外にも、場面転換を提示するためにブロックを構成する要素をいくつか変えることが検討できます。

例えば

  • Aメロが「タタタ…」と刻むようなメロディだったから、Bメロは「ターー」と伸ばすようなメロディにする
  • Aメロが4拍単位でコードを切り替えていたから、Bメロは2拍単位でコードを切り替えるようにする
  • Aメロはメロディが詰まっているから、Bメロはメロディの間に空白を設ける

というようなやり方によってBメロを作り込むことなどが検討できます。

とはいえ、ここでのBメロの基本的な方針は「Aメロの流れを適度に引き継ぐ」という点にあったため、そこには程良く共通性を持たせることも大切です。

具体的には、AメロとBメロそれぞれにおいて

  • メロディのリズムを変える⇔音階は似たようなものにする
  • コードの種類を変える⇔コードチェンジのタイミングは同じにする
  • ブロックそのものの大きさを同じにする

などの観点を持つことなどができます。

AメロとBメロで共通する部分が多いほど流れを引き継ぐことができますが、既に述べた通り共通点を持たせすぎるとそれぞれは似たものだと感じられ、場面転換が希薄になります。

すなわち

「共通」と「違い」のそれぞれを程良く混ぜる

ということがこの方針におけるポイントとなります。

2.「A」とはまったく違ったものとして「B」で大きく場面転換する

二つ目として挙げた方針は、場面転換の度合いをより大きくするやり方です。

こちらも基本的な考えは前述したものと同じで、ブロックに含まれる要素に違いを持たせる程に場面転換は明確になっていきます。

上記で一覧として挙げた要素の一覧をもとに、Aメロとは違った要素によって成り立つようにBメロを組み立ててみてください

転調やモーダルインターチェンジで音使いを変える

こちらの方針では特にはっきりとした場面転換が求められるため、そこでは「音使いそのものを大きく変えること」も検討できます。

ここで導入できるのが

  • 「転調」
  • 「モーダルインターチェンジ」

などの概念です。

▼関連ページ
転調 その1 転調の概要(転調とは中心音と音のグループを変えること)と調の種類 モーダルインターチェンジの解説 モーダルインターチェンジとは何か?その使用方法や効果など

それぞれの詳しい解説は上記ページに譲りますが、これらの手法を活用することによってそもそも使用されている音のメンバーが大きく変わることになります

結果としてサウンドにもそれまでとは違った響きが生まれ、それがリスナーに強く場面転換を感じさせます。

テンポやリズムを変える

場面の切り替わりをはっきりとさせるために、テンポやリズムを変えることもできます。

これは具体的には

  • 「BPM=100」のAメロの後に「BPM=130」のBメロを盛り込む
  • 「四拍子」のAメロの後に「三拍子」のBメロを盛り込む

などのやり方を指します。

とはいえ、そもそもテンポやリズムはその曲に一貫性を持たせる重要な要素であるため、無計画にそれを実施してしまうとそれがリスナーを混乱させることにもつながってしまいます。

そのような意味から、テンポやリズムの切り替えを実施をするうえではきちんとした作り込みが必要だといえるでしょう。

▼関連ページ
作曲に活用できるリズムの種類(曲作りの幅を広げる)

サビを意識した作り込みについて

既に述べたとおり、「A-B-C(サビ)」型におけるBメロはその後に「サビ」を控えており、そこではサビへの流れをどう演出するかという観点も必要となります。

「サビへのバネ」を盛り込む

多くの曲におけるBメロでは、その後に登場するサビをより印象的なものにするための準備部分が盛り込まれています。

これを、私は

「サビへの盛り上がりを大きく演出する部分=サビへのバネ

と表現しています。

以下は、既存の曲における「サビへのバネ」に相当するフレーズの例です。

  • 『恋するフォーチュンクッキー』(AKB48)「カモンカモン…占ってよ」
  • 『世界に一つだけの花』(SMAP)「そうさ僕らは」
  • 『瞳をとじて』(平井堅)「Your love forever」

ここに挙げた三つとも、その部分のフレーズだけが特徴的な節回しになっており、かつサビ冒頭に向けての景気づけのような存在となっていることがわかります。

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仮に、この「サビへのバネ」のフレーズが無い状態でそれぞれのサビへつながることを想定すると、なんとも味気ない感じがしてしまいます。

このように、Bメロの最後(サビ直前)にはなんらかの「サビへのバネ」を盛り込むことが検討できて、それがサビをより印象付けることにつながります。

「サビより盛り上がらない」という観点を持つ

サビを意識する際にもうひとつ考えられるのが「サビより盛り上がらない」という方針で、これはあらかじめサビが思いついている場合に用いられる手法だといえます。

一般的なサビのメロディやコードが動きのあるものになることを前提にすると、Bメロは

  • メロディの音域を狭くして音階の起伏を減らす
  • メロディのリズムを単調にする
  • メロディに空白部分を多く設ける
  • コードチェンジの切り替えを少なくする

などの方針によって、動きの少ないもの(=印象に残りづらいもの)にすることなどが検討できます。

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また、これらはAメロで始まった曲の勢いをBメロで失速させてしまうことにもつながるため、導入には注意が必要です。

まとめ

ここまでBメロの作り方について、さまざまなパターンを例に挙げながら詳しく解説してきました。

既に述べた通り、Bメロを作る際にもまず「ブロックをどのようなものとして聴かせるか」をはっきとりさせ、それに沿ってメロディやコード、ブロックそのものの構成を組み立てていけばやるべきことが明確になります。

いろいろな曲のBメロをメロディやコードなどの面から紐解き、「A」「サビ」などとの関連性を踏まえつつ分析してみると、それをどのように組み立てていくべきかが次第に見えてくるはずです。

Bメロを作るうえでは自由な発想を持つことも大切です。

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