「楽典」とはなにか?|作曲学習における楽典の必要性とおすすめの本

作曲の先生として活動している内山です。

音楽理論などを勉強していると

  • 「長3度の音程で…」
  • 「属和音の…」
  • 「導音の役割で…」

など、見慣れない言葉に出会うことも多いものです。

学習を進めるにあたってはまずそれらの言葉が意味するところ理解しておく必要がありますが、それには「楽典」というジャンルに分類される書籍を活用するのがおすすめです。

これについて、先日以下のツイートをしました。


音楽の基礎知識を身につけるにはやっぱり楽典に目を通すのが一番かなと思います。理論書を読むときも、または作っている曲を構造で捉えるときも、なんにしてもこのあたりの知識は必要になるので、ちょっとおカタいですが一度やっておくといいです。これは定番の「黄色い楽典」です

こちらのページではそんな「楽典」の概要と、上記ツイートでも挙げているようなおすすめの「楽典系書籍」をいくつかご紹介します。

「楽典」の概要

こちらで取り上げている「楽典」という言葉は、「音楽の辞典」を短く縮めたような意味合いを持つ言葉です。

「辞典」という言葉にあるように、楽典とは平たくいえば

「音楽に関するいろいろな言葉の意味をまとめたものの総称」

で、音楽系の書籍や音楽に関する会話などで使われる言葉のほとんどの意味がそこで解説されています。

クラシック系=楽譜の記述に関する項目が多い

そもそも「楽典」は、クラシック音楽に代表される西洋音楽の教育の過程で生み出されたものであるため、内容はある意味でクラシック寄りです

また、それらが五線譜を基本とした「ピアノで表現できる音楽」を基礎とすることから、内容は「五線譜をどう読み解くか?」という観点によってまとめられていることが多いです。

そのため、いわゆるポップス・ロックなどの作曲には若干そぐわない部分もあり、利用をする際にはその点に注意が必要です。

check
特にコード進行やその「度数」などの機能的な概念は、ポピュラー音楽ならではといえます。ただ、それらもクラシック音楽で扱われている概念が土台にはなるため、やはり基礎知識として楽典の有用性は高いです。

楽典で扱われている内容

以下は、楽典で扱われている代表的な内容を一覧にしたものです。

  1. 音程
  2. 音階
  3. 調
  4. 和音と和声
  5. 拍子
  6. 五線譜の記譜ルール

これらに一通り目を通すことで、音楽に関するおおよその知識を無理なく身に付けることができます。

それぞれについて、以下にて簡単にご紹介します。

1. 音程

音楽は複数の音が連なることで生まれますが、そのような意味から楽典は「音と音の関係」という観点で解説が始まることが多いです。

ここで挙げている「音程」「音と音の離れ具合(距離)」を言い表す際に使われる言葉で、ポピュラー系の理論書などでもよく目にする

  • 完全5度
  • 短3度
  • 長7度

などは、まさにこの「音程」を具体的に表現したものです。

この点について理解をしておくことで、それをより音楽的に発展させた「音階」や「和音」(後述)を正確に捉えることができるようになります。

※関連ページ 音楽における「度数(ディグリー)」の詳細について(音程や「何番目か」を表す「度」という概念)

2. 音階

上記「音程」が「二つの音の離れ具合」を意味していたのに対し、それをさらに発展させて、複数の音を組織として並べたものがこちらの「音階」の概念です

これは、ポピュラー系では「スケール」とも言われるジャンルの知識で、いわゆる

  • メジャースケール=長音階
  • マイナースケール=短音階

などに関する内容が楽典でもきちんと語られています。

もちろん音階にはさまざまな種類があり、それらについても関連付けて学ぶことができます。

※関連ページ 「スケール」とはなにか?|音楽を作るための「音の並び方」について メジャースケールの内容とその覚え方、割り出し方、なぜ必要なのか?について マイナースケールの解説(ハーモニックマイナー・メロディックマイナーを含む三種について)

3. 調

上記「音階(スケール)」を、音楽で扱える状態に置き換えたものがこちらの「調」です。

多くの人にとっては、英語での「キー」という呼び名の方に親しみを感じるはずです。

上記で述べた「音階」がどんな形で音楽に転用されるのか、またその記譜のルールなどについてもこの部分で語られていることがほとんどです。

※関連ページ 曲のキー(調)を判別する方法【コードのみからキーを判別する】そもそも「キー」とはどのようなものか?

4. 和音と和声

音を重ね合わせたものが「和音」、またそれをつなげたものは「和声」などと呼ばれます。

これは、ポピュラー音楽では「コード」「コード進行」に相当するものです。

楽典では、

  • 和音がどのような観点によって成り立っているか
  • 和音にはどのような種類があるか
  • 和音の表現方法

などについて解説されており、それらを通してポップス・ロックの作曲で何気なく接している「コード」の構造について知ることができます。

※関連ページ 【コード(和音)とは?】 音楽で扱われている「コード」はどのように成り立っているか?を考える 【コード進行とは?(コード進行の作り方)】どのような手順に沿ってコード進行は作られるのか?を考える

5. 拍子

ここまでに述べた「音程」「音階」「和音」などはすべて音の高さにまつわるものでしたが、同じように「音の長さ」「音を発するタイミング」などについても楽典では扱われています。

こちらでは総合的に「拍子」という分類としていますが、これは広い意味で「リズムに関する概念」のことを指します。

より具体的には、

  • 音符や休符の種類
  • 拍子の種類
  • 小節の概念
  • テンポの概念

などが楽典に含まれており、それらを通してリズムについての基礎的な知識を身につけることができます。

※関連ページ 作曲に活用できるリズムの種類(曲作りの幅を広げる)

6. 五線譜の記譜ルール

冒頭でも述べた通り、そもそも楽典が「五線譜の読み解き方を解説するもの」という性質をあわせ持つものであるため、やはりその点についても多くのページが割かれています。

例えば、

  • 五線譜の成り立ち
  • 音符記号
  • 調号
  • 臨時記号
  • 特殊な表現
  • 速度記号
  • 反復記号

などの五線譜を読み書きするための情報がそこで語られています。

この分野にはポップス・ロックの作曲において必要性の低い情報も多く含まれているため、注意が必要です

check
例えば、「速度記号」について多くのページを割いている楽典もありますが、ポピュラー系では曲のテンポを「BPM(Beats Per Minute、1分間の拍数)」で表すことがほとんどであるため、それらを目にしたり、使用する機会がほどんどありません。

おすすめの「楽典」系書籍

ここまで「楽典」の概要について述べてきましたが、実際のところ、「楽典」という名前を冠した書籍には沢山の種類があります

また、上記で述べたような情報の記し方も書籍によってさまざまです。

こちらでは、その中でも広く親しまれているものや、おすすめできるものについてご紹介していきます。

「楽典 理論と実習」


楽典系の本として歴史を持つものでありながら、いまだに広く定番として知られているのがこちらの書籍です

ページ冒頭でご紹介したツイートでも述べていたように、「黄色い楽典」という愛称で親しまれています。

内容はとても標準的、かつ網羅的ですが、あくまで音大などのクラシック系の音楽教育を前提とするような内容となっているため、ポップス・ロックの作曲に活用するうえで情報の選別は必要になりそうです

「新版 楽典 音楽家を志す人のための」

こちらは作曲や演奏などに活用することを踏まえた、より実用性の高い楽典として評価を得ている書籍です。

内容がクラシック音楽を前提としたものであることに変わりはありませんが、後発の書籍ということで現代的な解釈がそこに盛り込まれています。

前述した「黄色い楽典」がやや硬い内容であったのに対し、こちらの方がやや取っつきやすいという印象を持っています。


「やさしくわかる楽典」

こちらは、いわゆる「情報をまとめただけのもの」という印象を持たれがちな楽典を、読み物として楽しめるものにまとめあげたような書籍です。

著者である青島広志さんは親しみやすいキャラクターでも知られている方で、その人柄がにじみ出ているような内容となっています。

単なる勉強ではなく楽しみながら学びたい、という方にぴったりです。

「いちばん親切な楽典入門」

最後にご紹介するのは、比較的最近リリースされたものの中でも評価の高い書籍で、こちらも前述した「やさしくわかる楽典」と同様に、わかりやすさや親しみやすさに配慮されたものです。

かわいいイラストや手書き風は字体などは、既にご紹介した「黄色い楽典」などにみられる「お勉強」の雰囲気とは程遠く、楽しさを重視したものだということがわかります。

こちらも、リラックスした雰囲気で読み進めていきたい、という人におすすめできる書籍です。

まとめ

ここまで、楽典についてあまり馴染みの無い人がそれを作曲の勉強に役立てられるよう、その内容等について解説してきました。

冒頭でも述べた通り、個人的に楽典は「音楽の辞典」のような存在として、手元に置いておきながら随時手に取って確認するものだと考えています。

check
これは、内容をすべて丸暗記するものではなく、情報が集約された実用的な書籍として活用するもの、ということを意味しています。

それらを通して、用語の意味やそれらの概念が自然と身についていくもので、結果として作曲や音楽に関する理解も深まっていくはずです

是非そのように、便利なツールとして楽典を活用して欲しいです。

上記を踏まえると、見やすさや情報の調べやすさなども楽典を選ぶうえで大事だといえそうです。