コード進行の覚え方(度数・ディグリー等を活用して効率良く覚える方法)

コードの演奏に慣れていない頃は、「もっと効率良くコード進行が覚えられたらいいのに」という思いを持つことも多いはずです。

私自身、サポートギターとして演奏する際には事前に譜面を見てコード進行をすべて暗譜し、それを本番で間違えずに弾くということをやっていますが、「どのようにそれをこなしているのか?」と問われれば、そこにはいくつかのコツがあります

ということで、こちらでは私が普段から実際に活用している「コード進行の覚え方」について詳しく解説していきます。

効率の良いコード進行の覚え方を模索している方は、是非参考にしてみて下さい。

コード進行を効率良く覚える方法の概要

前提となる「キー」と「ダイアトニックコード」の知識

まず、コード進行を覚えるにあたり前提となるのが「キー」「ダイアトニックコード」の概念です。

ポップス・ロックにおけるコード進行の多くは、ある特定のキーと、そのキーのダイアトニックコードを元に作られています。

これらについて理解を深めることは、コード進行の構造を把握するために大きな意味を持ちます。

詳しくは以下のページをご確認ください。

曲のキー(調)を判別する方法【コードのみからキーを判別する】そもそも「キー」とはどのようなものか?
ダイアトニックコードとスリーコード 概要や成り立ち、コードの役割などについて

コード進行を覚えるコツ「コード進行に意味を持たせる」

コード進行を覚えるコツは、簡単にいえば「コード進行に意味を持たせる」ということです。

これは、「むやみにコード進行を覚えるのではなく、コード同士を関連付けたり、大きな流れとして把握したりする」ということを意味します。

より具体的には、以下三点を複合させながらコードの流れを俯瞰的に記憶していきます。

  1. コード進行を「度数(ディグリー)」で捉える
  2. コード進行を「よくある形」と関連付ける
  3. 「機能的なコードの動き」を見つける

事前作業:コード進行(コード譜)のキーを明らかにする

作業に取り掛かる前に、まずコード進行(コード譜)のキーを明らかにしておきます

コード進行を効率良く覚えていくためには、前述した「コード進行の構造を把握する」という発想が欠かせません。

そのためにキーを明らかにして、どのようにそのコード進行が成り立っているかを考えられるようにしておく必要があります。

多くのコード譜やコード進行にはキーに関する記載が無いはずですが、そのような場合にもコードのみの情報をもとにキーを明確にしていきます。

※キー判別の方法については、既にご紹介したキー判別の解説ページをご参照ください。

コード進行を覚えるための方法

ここからは、コード進行を覚えるための方法詳細について、既にご説明した三点それぞれに分けて解説していきます。

1. コード進行を「度数(ディグリー)」で捉える

コード進行を覚えるためにまず活用できるのが、コード進行を「度数(ディグリー)」で捉える、という方法です。

ダイアトニックコード解説のページで述べているように、ダイアトニックコードには「何番目のコードか=度数」という考え方があります。

ここではその度数を活用して、コードの流れを度数に置き換えて把握しながら覚えていきます。

例として、以下に「キー=C」のダイアトニックコードに含まれる七つのコードを挙げます。

C・Dm・Em・F・G・Am・Bm-5

例えば、この中にある「C」は起点となるコードであるため「1番目=1度(I)」となります。

また、他にも「F」は「C」から数えて4番目であるため「4度(IV)」、「Am」であれば「6度(VIm)」、となります。

これらを前提として、例えば「キー=C」の曲の中に

C → F → Am

というようなコード進行が存在していた場合、これを度数によって

I → IV → VIm

と読み替えることができます。

もし度数という視点が無ければ、コード進行は「『C』があって、その次に『F』があって…」と、ひとつずつのコードが無関係につながっていると感じられてしまいます。

これが、「度数」の視点を設けることによって「ダイアトニックコード」という枠が設けられ、「その中でコードがどう動いているか」という意識が持てるようになるのです。

上記のコード進行例は構成が短いためその恩恵を感じにくいですが、展開が大きくなるほど、この「度数」の有用性を体感できるはずです。

このやり方を取り入れるにあたり、キーとダイアトニックコードに関する理解はもちろんのこと、いろいろなキーのダイアトニックコードと、それらを度数によって捉える力が必要になります。

2. コード進行を「よくある形」と関連付ける

二つ目の方法は、コード進行を「よくある形」と関連付ける、というやり方です。

コード進行には「定番の進行」とも呼べるようなパターンがいくつか存在しています。

度数と同じくそれらを活用すると、コード同士を効率良く結び付けながら把握していくことができるようになります。

例えば

I → VIm → IIm → V

という度数の流れによる構成は「いち・ろく・に・ご」という呼び名で広く親しまれているコード進行のパターンですが、前述の「キー=C」の曲において

C → Am → Dm → G

という流れがあった場合、上記を知っていれば「ああこの部分は『いち・ろく・に・ご』だなあ」と捉えることができます。

そもそもこれを行うには前提として「コード進行のよくある形」を沢山知っておく必要がありますが、何気ないコードの流れでもそこに意味を見出すことができるため、度数の概念と共にとても重宝します。

いろいろな「よくある形」

前述した「いち・ろく・に・ご」のような呼び名が無いものでも、「よくある形」のコード進行は沢山存在しています。

例えば、ダイアトニックコードの度数を順番に上げていく進行(順次進行)の

  • IV → V → VIm
  • I → IIm → IIIm → IV

などや、「カノン進行」に分類される

I → V → VIm → IIIm

のようなコード進行も、それらに相当します。

日頃からいろいろなコード譜を眺めて、それを度数によって分析することでこの「よくある形」を沢山仕入れることができるはずです。

3. 「機能的なコードの動き」を見つける

最後の一つは、「機能的なコードの動き」を見つける、というやり方です。

ダイアトニックコード内にあるそれぞれのコードは、「トニック(T)」「サブドミナント(SD)」「ドミナント(D)」という機能を持っています。

※詳しくは、既にご紹介したダイアトニックコード解説のページをご参照ください。

それぞれの機能は「トニック→サブドミナント」や「ドミナント→トニック」というように、ある程度の法則性をもって結びつきますが、これをコード進行を覚える際に活用していきます。

例えば、「キー=C」において

G → C

という流れがあった場合には、「『ドミナント→トニック』の流れになっている」と把握することができます。

また、前述の

C → F → Am

というコード進行であれば、「トニック→サブドミナント→トニック」という機能の動きとなりますが、「『トニック』で『サブドミナント』を挟んでいる」という見方もできます。

ドミナントモーション、ツーファイブの活用

上記の「機能的なコードの動き」を発展させた「V7→I」や「IIm→V7」などのコード進行は、「ドミナントモーション」「ツーファイブ」という呼び名によって多くの曲の中で頻繁に扱われています。

▼関連ページ
ドミナントセブンスとドミナントモーションについて|コード進行を操る重要な働き ツーファイブとは?(概要と基本的な成り立ち、活用方法、マイナーキーにおける例など)

これらは「ドミナント→トニック」「サブドミナント→ドミナント」という機能の動きをコード進行に置き換えたものですが、これが理解できていると、例えば

Gm7 → C7

というコードを見ただけで「ああ、『キー=F』のツーファイブだ」と瞬時に把握することができます。

また、例えば「キー=C」において

C → D7 → G

という構成があった場合、ここでの「D7」はダイアトニックコード内に存在しないものですが、「『D7→G』は『キー=G』における『V7→I』だ」と捉えることができるようにもなります。

強進行の活用

コードの機能という観点とは少しずれますが、上記「V7→I」「IIm→V7」のように、ルート音が「完全4度上」に動くコード進行は「強進行」と呼ばれ、結びつきの強いコードの流れとされています。

▼関連ページ
強進行について(通称「4度進行」=ドミナントモーションの元になる力強い音の動き)

コード進行を覚えるのにこの「強進行」を活用すると、例えば

Em → Am → Dm

というコードの流れがあった場合に「ルートがすべて『完全4度』上に動いている=強進行のコードの流れになっている」と把握することができるようになります。

コード進行の覚え方総括

ここまでにご紹介した三つの方法は、お伝えしている通り複合させて活用していくものです。

これは、コード進行を覚える時、それを「度数」からも、「よくある形」からも、「機能」からも捉えて記憶していくということを意味しています。

以下のコード進行とその覚え方は、ご紹介した三点を実際にどう複合させるかという、総括的な例です。

コード進行例
E → Bm7 → E7 → A → Am
覚え方の総括例
  • キーは「E」(キーを確定させる)
  • 「I → Vm7 → I7 → IV → IVm」(全体を度数で把握する)
  • 「E=I」が「A=IV」に向かっている(大きな流れを度数で把握する)
  • 「E=トニック」が「A=サブドミナント」に向かっている(大きな流れを機能で把握する)
  • 「Bm7→E7」はツーファイブ(機能的な動きを見つける)
  • 「E7→A」はドミナントモーション(機能的な動きを見つける)
  • 「A→Am」はサブドミナントのマイナー化(よくある形を見つける)

上記にあるように、まずキーと度数を把握したら、機能と度数によってコード進行の大きな流れを捉えます

そのうえで、「機能的なコードの動き」や「よくある形」などの観点によってコード進行を部分的に把握していき、それを全体につなげながら記憶していきます。

一曲のコード進行を覚えるときは…

また、一曲のコード進行すべてを覚える必要があるような時には、全体を一度に記憶しようとするとなかなか効率が上がらないはずです。

この例のように、把握しやすい範囲に区切って覚えていくというような工夫が別途必要になります。

番外編

コード進行を効率良く覚えるには、音楽理論の理解が欠かせません。

以下のページでは、音楽理論の何をどこまで、どの順番で学ぶべきかという点を解説していますので、そちらも是非参考にしてみて下さい。
音楽理論を知りたい人のための「学習の見取り図」※独学に活用できる「音楽理論の何をどの順番で学べばいいか」のまとめ

まとめ

ここまで、コード進行の覚え方について解説をしてきました。

以下は改めて解説をまとめたものです。

  • 前提として「キー」と「ダイアトニックコード」に関する知識が欠かせない
  • コード進行を覚える時は、曲のキーを明らかにするところから始める
  • コード進行は「度数」「よくある形」「機能的なコードの動き」を複合させて把握する

また、ここまでにご説明したもの以外にもコード進行を覚える方法はいくつかありますが、効率良くそれらを実施するためには、やはり音楽理論的な知識は欠かせないといえるでしょう。

それは、裏を返せば「音楽理論の理解が深まるほど簡単にコード進行を覚えられるようになる」ということを意味します。

まずはこちらでご紹介している方法を活用しつつ、並行して理論の学習を続けながら、効率の良いコード進行の覚え方を自分なりに探究してみて下さい

「コード進行を度数で考えること」を習慣にしましょう

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