私は日頃から作曲の先生として活動していますが、中でもアコギ弾きのみなさんから
アコギを弾くために必要な音楽理論を教えて下さい
と言われることがあります。
私自身も25年以上常にアコギに触れてきたわけですが、音楽理論はギターに置き換えて理解することがほとんどで、それをアコギ弾き的な観点から捉えることも多いです。
そんなわけで、こちらのページでは「アコギの作曲や演奏に活用できる音楽理論」と題して、ある程度実用的な内容に絞って音楽理論を解説していきます。
目次
アコギのための音楽理論(導入編)
まず、アコギに限らず「そもそも音とは」というところを理解するのが、音楽理論をスムーズに学んでいくためのポイントです。
音の並び方
ここで一度ピアノの鍵盤を確認しますが、以下の図にある通り、鍵盤には「白鍵=7個」「黒鍵=5個」、計12個の音が存在しています。
これを見るといかにも黒鍵のみ扱いが低いように感じられてしまいますが、これらの音は実際のところ、以下のように等間隔で並んでいます。
ここから、多くの人にとって馴染みのある「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」という音階(上記図の白抜きの部分)は、
12個の音の中から選ばれた7音
だということがわかります。
アコギ指板上における音の配置
そのうえで、上記をアコギの6弦上に置き換えたものが以下の図です。
6弦の開放は「E=ミ」の音なので、鍵盤の図にあるとおりそこから音は、
ミ→ファ→ファ#→ソ…
と上がっていきます。
そのため、
- 6弦0フレット=ミ(E)
- 6弦1フレット=ファ(F)
- 6弦2フレット=ファ#(F#)
- 6弦3フレット=ソ(G)…
というような音の並びになっていきます。
同じように、例えば5弦の開放は「A=ラ」であるため、そこから音は
ラ→ラ#→シ→ド…
と上がっていきます(以下図)。
また、4弦なら開放は「D=レ」なので
レ→レ#→ミ→ファ…
となります(以下図)。
各弦の開放の音から音の配置を導き出す
上記を整理すると、つまり
- 6~1弦の開放の音を理解する。
- ピアノの鍵盤をもとに12音の並びを把握する。
- 各弦における開放の音から、12音の並び方に沿って音を並べる
という手順をとれば、それぞれの弦にある音が簡単に把握できる、ということがわかります。
ちなみに、アコギにおける6~1弦の開放の音は以下の通りです。
- 6弦開放=E(ミ)
- 5弦開放=A(ラ)
- 4弦開放=D(レ)
- 3弦開放=G(ソ)
- 2弦開放=B(シ)
- 1弦開放=E(ミ)
アコギのための音楽理論を学ぶには、まず大前提として指板の上で音がどのように並んでいるかを理解する必要があります。
上記に沿って、まずその点について理解を深めるようにして下さい。
アコギ指板上の音すべてを音名で把握できれば一番理想的ですが、そのための第一ステップとして、まずは上記の手順によって開放弦から音を導き出せるようになることを目指して下さい。
アコギのための音楽理論(コード編)
アコギ弾きの皆さんにとって最も馴染み深いのが「コード」です。
ここからは、前述の内容をさらにコードの仕組みへとつなげていきます。
コードにおける「ルート音」という存在
アコギのコードには「ルート音」という概念があります。
ルート音とは簡単にいえば「最低音」のようなもので、コードを演奏するうえで一番低い音のことを指します。
また、ルート音はコード表記における大文字アルファベットの音を指すため、「G」のルート音は
G=ソ
だということが瞬時にわかります。
以下はコード「G」の図です。
このコードを演奏するうえで「一番低い音」にあたるのはどれかといわれれば、それは6弦の3フレットです。
6弦3フレットの音は、前述の「指板上の音の配置」から「G=ソ」の音だと確認できるため、上記の通り
ルート音の「G=ソ」が最低音として6弦に配置されている
ということがわかります。
必ずルート音が最低音になる
アコギで演奏するコードは、基本的にすべて上記の概念によって成り立っています。
以下は代表的なコードのポジションと、そこでのルート音を図として示したものです。
この図にある通り、それぞれは
- C=ルート音「C(ド)」=5弦3フレット
- Am=ルート音「A(ラ)」=5弦0フレット
- Dm=ルート音「D(レ)」=4弦0フレット
のようになっており、コードを演奏するうえで必ずルート音が最低音になるよう配置されていることがわかります。
例えば「C」や「Am」において6弦を弾かないよう指示されているのはこのような理由からで、それぞれのコードのルート音はあくまで5弦にあるため、それよりも低い音である6弦の音は演奏にふさわしくないのです。
また、上で挙げたような「0フレット~3フレット」あたりをルートとする(コードフォームに開放弦を多く含むコード)を「ローコード」などと呼びます。
ルート音を他の弦にしてコードを押さえる
上記で解説した「Am」は5弦0フレットをルートとしたものでしたが、もちろんこれを「6弦ルート」としても表現できます。
例えば、前述したように6弦上にある音は「開放(0フレット)」の「E=ミ」から始まり、
ミ→ファ→ファ#→ソ…
と上がっていきますが、音はそこからさらに
ソ→ソ#→ラ→ラ#…
と続いていくため、6弦の5フレットにある「A=ラ」の音をルート音として活用することができます。
以下は、それをコードポジションとして表した図です。
一般的にギターにおけるルート音は6弦~4弦で表現されますが、このようにコードはいろいろな弦をルート音として演奏することができます。
コードを成り立たせる「構成音」
ここで前述した「G」を改めて紐解くと、押さえられているフレットの音はそれぞれ以下の図にある音になっていることがわかります。
- 6弦=G(ソ)
- 5弦=B(シ)
- 4弦=D(レ)
- 3弦=G(ソ)
- 2弦=B(シ)
- 1弦=G(ソ)
ここから、コード「G」を成り立たせているのは
G=「ソ・シ・レ」
という三つの音であることがわかります。
このように、コードを成り立たせる音のことを「構成音」などと呼びます。
もう一つの例として、以下にコード「C」のコードポジションと構成音を示します。
- 6弦=弾かない
- 5弦=C(ド)
- 4弦=E(ミ)
- 3弦=G(ソ)
- 2弦=C(ド)
- 1弦=E(ミ)
ここから、コード「C」の構成音は「ド・ミ・ソ」だということがわかります。
ひとつのコードをいろいろなコードフォームで表現できる
上記でルート音を他の弦で表現したように、そもそもギターの指板上にはさまざまなポジションに同じ音がいくつも存在しているため、考え方次第ではひとつのコードをいろいろなコードフォームによって表現することができます。
以下は、前述の「G」をその他のポジションで表現した図です。
これらはすべて
- ルート音=「ソ」
- 構成音=「ソ・シ・レ」
という点が守られているため、コード「G」だと解釈できます。
このように、いろいろな形でコードを表現できるのがギターの面白いところです。
特にアコギでコードを弾く際には、この点を理解しておくと演奏の幅が広がります。
コードを弾く際には、そこで押さえられている音を明らかにし、コードを「構成音」という観点から捉えるとアコギの演奏がより理論的に行えるようになります。
アコギのための音楽理論(コード進行編)
ここまでを通してコードについて理解が深まったところで、さらに気になるのが「コード進行をどう理論的に組み立てていくべきか」という点です。
実際のところ、このあたりから
アコギに特化した音楽理論
という分類がなくなり、その解説は根本的な音楽理論の解説と同じものになっていきます。
アコギを使った作曲や演奏をスムーズに行えるようになるための理論
音楽理論を知るにあたり「何を、どこまで学ぶべきか」という点については以下のページにて解説しています。
音楽理論を知りたい人のための「学習の見取り図」※独学に活用できる「音楽理論の何をどの順番で学べばいいか」のまとめ
上記ページにおける解説は、それぞれの理論的知識を具体的に解説したページにつながっているため、こちらを確認することですぐにでも音楽理論の学習を始めることができます。
そのうえで、アコギを使った作曲や演奏に特に活用出来る音楽理論の知識を改めて以下に挙げます。
・ダイアトニックコード
ダイアトニックコードとスリーコード 概要や成り立ち、コードの役割などについて
ダイアトニックコードの覚え方(割り出し方)
・代理コード
代理コードについて あるコードに似た響きを持つコード&スリーコードの代わりに活用するマイナーコード
・セブンスコード(四和音)
セブンスコードの解説 コードに「7度」の音を含む四和音、その成り立ちと詳細について
・カデンツ
カデンツ(終止形)の詳細とポップス・ロック作曲への応用
・強進行
強進行について(通称「4度進行」=ドミナントモーションの元になる力強い音の動き)
・各種ノンダイアトニックコード
ノンダイアトニックコード 意味とその種類の解説 活用のルールやコード進行例等
・リズムの知識
作曲に活用できるリズムの種類(曲作りの幅を広げる)
これらをもとにそれぞれに対して理解を深め、それを前述した「アコギ指板における音の配置」や「いろいろなコードフォーム」などと照らし合わせながら、アコギに置き換えて把握してみて下さい。
まとめ
ここまでアコギのための音楽理論について解説してきました。
ポイントとなるのは
- アコギ指板上の音の配置
- それをもとにしたいろいろなコードフォーム
を理解し、演奏できるようになることです。
それと各種音楽理論の知識を掛け合わせることにより、アコギを使った作曲や演奏の幅は確実に広がって行きます。
是非楽しみながら理論を学んでいただきたいです。
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