曲分析の重要性について(曲分析の概要や効果、曲分析を習慣にすると作曲が上達する理由について)

私が普段から作曲を教えている中で特に強調しているのが、「曲分析の重要性」についてです。

この点について、以前下記の投稿をしました。

曲分析をやれるようになると自走できるようになる。わからないことや実際どうなってるの?というところを自分で勝手に調べて分析して、構造で理解して吟味することで自分の曲にも活かせるようになって作曲の幅がどんどん広がっていく。それを自分ひとりの力でやれるようになる、というのが大きいです。

ここに書いている通りなのですが、作曲を上達させたかったら曲を分析しましょうというのが私の持論で、分析にきちんと取り組む人ほど確実にレベルアップしていきます。

こちらのページではそんな曲分析の概要や、その効果などについて解説していきます。

「曲分析」とは?

上記の投稿でも述べている通り、曲分析の目的は「曲の成り立ちを知る」というところにあります。

曲をただリスナーとして聴くだけではなく、音楽を制作したり表現したりするためにそれがどのような仕組みになっているかを紐解くのがここでいう「曲分析」の作業です。

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そもそも、クラシック音楽などでは「アナリーゼ(=楽曲分析)」という学問の分野が確立されていますが、それらがより音楽教育的であるのに対し、私がみなさんにお勧めしているのはもっと身近で易しく、誰にでも実施できる分析手法です。

また、曲分析には大きく

  1. 作曲のための曲分析
  2. 演奏・編曲のための曲分析

の二つがあり、それぞれによって着眼点が若干変わります。

私は「作曲を上達させること」を目的として前者の分析を主に扱っていますが、時として演奏・編曲的な観点での分析がそこに入り込むこともあります。

分析を通して曲の成り立ちが理解できることでそれを自分でも作れるようになり、結果的に作曲レベルは向上していきます

曲分析の項目

では、「作曲のための曲分析」とは具体的にどのようなものなのかといえば、私が着目するのは、主に曲の中にある以下のような点です。

  • コード
  • メロディ
  • リズム
  • 曲構成

これらは曲を聴くことで確認できる、いわば「データ」的な分析に分類できるものです。

1. コードの分析

ポップス・ロックの作曲を考えるうえで、コードに対する理解は避けて通れません。

コードの分析では、既存の楽曲においてコードがどう扱われ、それぞれがどうつながることでどんなハーモニーを生み出しているかを確認し、その意図や音として聴いた時の感覚などを吟味します。

これを実施するにあたり必要となるのが、「キー」や「ダイアトニックコード」などの音楽理論(コード理論)に関する知識です。

▼関連ページ
キー(音楽)について キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉
ダイアトニックコードとスリーコード 概要や成り立ち、コードの役割などについて

音楽理論を土台としつつ、理論的なコードの構成が楽曲にどう反映されていたり、それによってどんな響きが生まれているかを考えます。

これにより、理論が「単なる情報」ではなく「活用できる道具」に変わります。

コードの分析をメロディに広げる

後述するようにメロディに対しても別途分析を行いますが、本来コードとメロディは密接に関係しているものです

それは同じメロディでもコード(=ハーモニー)が変わることで印象が変わったり、特徴的なコードを扱うことでメロディの選択肢が増えたりすることからも理解できます。

こちらの分析ではコードに着目しつつ、そこからメロディに対して視点を広げることもできます。

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その場合にも、コードの構成音など、音楽理論的な観点を持つことが大切です。

コード進行の分析については以下のページでも詳しく解説しています。
コード進行分析の方法 アナライズの手順とコツ・注意点などの解説(キー判別、理論的解釈など)

2. メロディの分析

コードと共に曲を印象付けるのが「メロディ」です。

曲分析の中ではメロディの音使いや形などについて確認し、それらがどのような効果を生んでいるかを確認していきます。

またメロディには「音域」という概念があり、その点について細かく分析することもできます。

▼関連ページ
作曲のコツ|メロディの音域に注意して作曲をすることの重要性について

リズム的な観点からメロディを分析する

メロディの良し悪しはリズムによるところが大きいもので、そのような意味からメロディを分析するうえでリズムに対して視野を広げることも大切です

それは、具体的には

  • メロディがどんなノリ(音符や休符による構造、アクセントの置き方)を持っているか
  • どんなタイミングでメロディが鳴っているか(フレーズがどう置かれているか)

などを考えることを指します。

メロディの分析について、以下のページにて詳しく解説しています。
メロディ分析の方法 メロディのどんなところに着目して分析を行うべきか

3. リズムの分析

上記で述べたように、リズムの分析は「メロディ」と直結することが多いです。

あわせて曲そのもののリズムに対する分析も行いますが、ポップス・ロックの楽曲の多くは基本的に一定の拍子やテンポによって曲が展開していくため、曲が持つ雰囲気に対してそれらがどのような影響を与えているかを考えるのが、基本的なリズムの分析だといえます。

アクセントやコードチェンジのタイミングに着目する

また、曲のリズムを分析するうえでアクセントコードチェンジのタイミングなどに着目することもできます。

特徴的なアクセントの置き方がその曲の魅力につながっていることは多く、それらを読み解くことも曲に対する理解を深めるのに効果的です。

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曲によっては変拍子が加えられていたり、特殊な小節が存在することもあるため、そのような部分をリズム的な構造から紐解くこともできます。

4. 曲構成の分析

作曲をするうえで、音楽理論的な観点と共に重要となるのが「どのように曲を構成(展開)させるか」という点です。

この「曲構成の分析」では、曲がどんなパーツによってどう組み合わされて展開しているかを確認します。

これは前述した「コード」「メロディ」の分析など、音に直結する内容とはまた種類が違いますが、この点にきちんと着目することで曲分析の質はより高まっていきます。

構成面を先行させて曲を捉える

曲構成の分析では、主に以下のような点を確認します。

  • 曲の形式
  • 各ブロックごとの違い
  • サビを目立たせるための仕掛け
  • メロディが無い部分(空白)

もちろん、曲の構成は「コード」「メロディ」などによって成り立つため、構成の分析はある意味で「コード」「メロディ」の分析であるともいえます。

これは、「どのような構成(構造)によって成り立っているか」という観点からコードやメロディを捉えること、とも言い換えることができます。

データに収まらない部分の分析

前述した四つの項目は、既に述べた通り「曲のデータ」に関する分析に相当するものでした。

そのうえで、私が提唱しているのは「データに収まらない部分(感覚的な部分)」も同時に分析する、というやり方です。

これを私は「『気持ち編』の分析」などと呼んでいますが、これらを整理すると、曲分析には

  1. データ編
  2. 気持ち編

の二種類がある、ということになります。

「なぜ良いか?」を考える

「気持ち編」の分析は、文字通り自分の気持ちや感覚に向き合う作業で、

  • なぜ「良い」と感じるか
  • なぜ何度も聴きたくなるのか
  • なぜ歌いたくなるのか

などをあれこれと考える行為のことを指します。

分析結果はデータとして理路整然とまとめることが難しいため、思ったことや感じたことを記述していくかたちとなります

よりたくさん思考を巡らせて、分析の結果としていろいろなことを書き出せるほど分析の質は高まっていきます。

「気持ち編」を取り入れた経緯

そもそも、私が自分なりに曲分析を始めたころは、前述した「データ編」の部分のみに着目して曲に向き合っていました。

しかし、分析を何曲か進めていくうちに、

曲を「良い」と感じる要因はデータだけにとどまらない

ということに気付いたのです。

そこから、分析を行う際には上記で挙げたような「良い曲である理由」を必ず考えるようになりました。

それにより、それまで以上に曲にきちんと向き合うことができるようになって、結果としてそれはデータ編の分析を充実させることにもつながりました

「曲分析」の実際のところ

このページの冒頭で

曲分析の目的=「曲の成り立ちを知ること」

だと述べていましたが、それはあくまでも表面的なもので、実際のところ曲分析の最終的な目的は「分析力を身につける」という点にあります。

曲分析を繰り返し行うことで曲を読み解く力が身につき、

  • 「良い曲/良くない曲」を分けるものとは何か
  • より良い曲にするためにはなにをどのようにすればよいか

などが自分なりにわかるようになります。

結果として作曲を行う際により質の高い判断ができるようになり、より良い曲を作り上げることができるようになっていくのです。

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もちろん音楽に絶対的な答えはないため、ここで述べているように「自分なりの尺度を持つこと」が作曲の質を高めるうえでのポイントとなります。

曲分析を実施するうえではこの点を踏まえ、(「作曲のネタ探し」を前提としてしまうのではなく)1曲を深くしっかりと読み解いていけると理想的です。

補足

以下のページでは、私がオリジナルでまとめた「曲分析ガイドブック」をご紹介しています。

音楽理論の学習などと違って特に自分一人では実施することが難しい曲分析の作業を円滑に進め、それを確実に作曲の上達につなげてもらうことを目的として分析のやり方をまとめています。

まとめ

ここまで曲分析の概要や、その効果などついて解説してきました。

以下はそのまとめです。

  • 「曲分析」とは、曲がどのような仕組みになっているかを紐解く作業
  • データ編として、メロディ・コード・リズム・曲構成などに着目する
  • あわせて「気持ち編」の分析を行う
  • 曲の成り立ちがわかり、分析力が身につくことで作曲が上達する

曲分析に慣れないうちは、まず曲を聴いてメロディの音階を楽器やDTM上に置き換えてみるだけでも得るものがあるはずです。

そのような行為を通して、曲に対して「作曲の視点」から向き合うことを習慣にしてみて下さい。

音楽理論や作曲法の学習が進むほどに、分析の内容もより充実していきます。