作曲の中心となる作業は「メロディを作ること」です。
「さあ曲を作ろう!」と思い立っても、肝心のメロディが思いのほかスラスラと出てこないことで作業が止まってしまう、という人は多いはずです。
こちらのページではそんな皆さんに向けて、25年以上作曲をしてきている私が
という点にテーマを絞り解説していきます。
メロディ作りを少しでも前に進めるための参考にしてみて下さい。
目次
メロディ作りの前提
そもそも、メロディはただやみくもに作られるものではなく、ある程度のルールの上に成り立つものです。
ではそのルールとは何かといえば、それらは「音階」や「リズム」であり、中でも
という点をきちんと把握しておくことが、メロディ作りをスムーズに進めるためのポイントとなります。
そして、そこにつながるのが「キー」という概念です。
キーについて
「キー」とは「曲にどんな音を(主に)活用するか」を定義するものです。
キー(音楽)について キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉
つまりこれは
ということを意味しています。
「キー」は、基本的に「メジャースケール」「マイナースケール」によって成り立ち、それらはさらに中心音(起点となる音)によって細分化されます。
▼関連ページ
メジャースケールの内容とその覚え方、割り出し方、なぜ必要なのか?について
マイナースケールの解説 ハーモニックマイナー・メロディックマイナーを含む三種について
詳しい解説は上記ページに譲りますが、これらを整理すると
という解釈が成立します。
例えば「キー=Cメジャー」というとき、その曲では「ド」という音を中心としながら、
の音が主に扱われます。
また、「キー=Dメジャー」であれば、「レ」の音を中心としながら
の音が扱われます。
これらの音のグループは、前述した「メジャースケール」そのものです。
話を「メロディ作り」に戻すと、つまりメロディをスムーズに作っていきたければこの「メジャースケール」「マイナースケール」についてきちんと理解を深めておく必要があり、メロディを作る際にはそれらの知識を活用することが大切だということです。
キーを決めたうえでメロディ作りを進める
メロディを作る時、何もないところでただ
と考えようとする人がよくいますが、これは前述したキーやスケールの概念を前提とすると少し敷居の高い行為だといえます。
メロディ作りに慣れていない時点では、まず「目安となる音使い=キー」を決めるべきで、それによりある程度のガイドを設け、無理なく安定してメロディを生み出すことができるようになるのです。
ダイアトニックコードを活用できる
また、作曲ではメロディとあわせて「ハーモニー(コード進行)」を考えることも求められますが、こちらもキーが決まっていれば、そこに紐づくコードを活用しながらまとまりのある流れを作り出すことができます。
その「キーに紐づくコード」は、具体的には「ダイアトニックコード」と呼ばれるものです。
▼関連ページ
ダイアトニックコードとスリーコード 概要や成り立ち、コードの役割などについて
メロディ作りの際にそれらも活用し、そこからまた新たなメロディを連想することができます。
- キーを決める
- キーのダイアトニックコードを活用してメロディを作る
メロディを作るための手段
ここで、メロディを作るための手段を一度整理しておきます。
主に想定できるやり方は以下の三点です。
- 自由にメロディを歌う
- 楽器でメロディを演奏する
- DTM(DAW)でメロディを打ち込む
メロディを作る手段(1)自由にメロディを歌う
まず最も手軽で、誰にでもできるのが「メロディを歌う」というやり方です。
これは歌もの(ボーカルのメロディラインがある曲)を作る場合には欠かせない行為で、それは「歌っても無理がない」などの観点がメロディ作りに求められるからです。
▼関連ページ
歌もの(ボーカルメロディのある曲)を作曲するためのコツ|歌いやすい、歌いたくなる曲を作るためには?
多くの人が取り組もうと考える「鼻歌」によるメロディ作りなどは、こちらに分類されます。
ここに前述した「キー」の概念を加えると、メロディは楽器やDTMなどを活用し、コードの音を伴奏として歌うのがより望ましいです。
詳しいやり方は後述しますが、コードの響きから心地良い音の流れをイメージしつつ、そのキーのメジャースケールを意識してメロディを歌っていくと、より効果的にメロディを生み出していくことができます。
メロディを作る手段(2)楽器でメロディを演奏する
また、メロディを考える際には楽器を活用することもできます。
例えばピアノやギターを使い、メロディラインをそのまま演奏として表現していくやり方がこれにあたりますが、これには、
メロディが「器楽のメロディ」になってしまう
という難点があります。
ボーカル曲を前提とするなら、楽器によって作ったメロディは必ず声に出して歌うべきで、それによって歌にしたときの感覚を確認することができます。
また、メロディ作りにキーやスケールを意識すべきという点は同じで、それを踏まえると、楽器を使ってメロディを考える際には、きちんとスケールを演奏することが求められます。
メロディを作る手段(3)DTM(DAW)でメロディを打ち込む
PCやスマホを使って曲を作る場合には、それらのソフトの中でメロディを考えていくこともできます。
▼関連ページ
打ち込み(パソコン・DAW)による作曲手順の解説|曲作りの概要や方法をご紹介します
これは前述した楽器を使う方法に近いもので、作り上げたメロディラインが器楽的なものになってしまうという点に注意する必要があります。
同様に、キーやスケールの理解や、それらを踏まえたうえでの作業も必要となりますが、データを直接的に打ち込んで音階を俯瞰的に確認できるため、その点については楽器の演奏よりも難易度が低いといえそうです。
- メロディを歌う
- 楽器でメロディを演奏する
- DTM(DAW)でメロディを打ち込む
メロディ作りの実際のテクニック
ここからは、実際にどのような方法によってメロディを作っていくべきかという点についてより詳しく考えていきます。
メロディを作る際にポイントとなるのは、ページ冒頭でも述べたように
- 音階的な観点
- リズム的な観点
の二つです。
音階的な観点(1)スケール内の音を活用する
まず一つ目に必要となるのは「音階的な観点」で、これには前述した「スケール」が活用できます。
「メジャースケール」を前提として話を進めると、例えばあらかじめ「キー=Cメジャー」と決めた場合、既に述べた通りそこでは
の音階が活用できます。
これは
- ドーードミソ~…
- ソファミファミーレレ…
のようなメロディを作ることを意味します。
これによって、統一感がある自然な音階を生み出すことができます。
メロディを歌う場合にはコードの伴奏を付ける
上記を楽器やDTMで表現する場合には、スケールに沿ってそのまま音を弾いたり、データを打ち込んだりすることでメロディを組み立てることができます。
また、メロディを歌って考える場合には前述した通りコードを伴奏にすることで、イメージをより浮かべやすくなるはずです。
ダイアトニックコードにおける「I」のコード(「キー=Cメジャー」でいう「C」のコード)を鳴らして、そこから音階を連想すると初心者の人でも進めやすいでしょう。
音階的な観点(2)コードの構成音を活用する
スケールとあわせて活用できるのがコードの構成音です。
これにはメロディ作りと共に「コード進行の組み立て」を並行して行うことが前提となります。
例えば
のようなコード進行がイメージできていた場合、それぞれのコードの構成音は
- C=ド・ミ・ソ
- F=ファ・ラ・ド
であるため、各コードの上ではその構成音がメロディとして心地良く調和します。
これは、具体的には「C」というコードの上では
- 「ド・ミ・ソ」の音を多く使う
- 「ド・ミ・ソ」の音を長く伸ばす
- 「ド・ミ・ソ」で始まる・終わるようにする
というようなことを意味しています。
前述した「C→F」を例とすれば、
C (ド,ミ,ソ) |
F (ファ,ラ,ド) |
ドードレミーミー | ファーソラー |
のようなメロディはコードにきちんと調和します。
上記を見るとわかるように、それぞれのコード上ではメロディに構成音をより多く含めたり、アクセントの強く出る部分にそれらを活用しています。
音階的な観点(3)順次進行か跳躍進行かを意識する
スケール内の音をメロディに使う場合、「それらをどう進ませるか」という観点からも音を組み立てることができます。
それは、
- スケール内の隣の音に進む=「順次進行」
- スケール内の隣より離れた音に進む=「跳躍進行」
のうちどちらによって音を進めるかを考えることを指します。
例えば、
のようなメロディは、「ド・レ・ミ・ファ…」というスケールの中で音を順番に上げること成り立っているため、典型的な順次進行のメロディといえます。
一方で、
のようなメロディは、スケールの中で音が跳躍しており、こちらは跳躍進行のメロディに分類されます。
順次進行のメロディにはスムーズさがあり、その反面で音階の変化が緩やかであるためインパクトは少なめです。
また跳躍進行は音階の変化が激しいためインパクトを出せますが、あまりにやりすぎると不自然なメロディだという印象を与えてしまいます。
「順次」と「跳躍」のバランス
もちろん、ひとつのメロディにはこれら「順次進行」「跳躍進行」が混在していることがほとんどで、
のように、前半を順次進行で組み立て、後半を跳躍させるというような作りにすることもできます。
ただ何となくメロディを考えるのではなく音階に配慮し、このように「順次進行」と「跳躍進行」をバランスよく混合させることも、魅力的なメロディを作るためのヒントとなるはずです。
リズムな観点(1)メロディが持つ音符の細かさを考える
前述した「音階」とあわせ、メロディには「リズム」という側面もあります。
その最も直接的な例が「メロディがどのような音符によって成り立つか」を考えるということで、これは簡単にいえば
- 「タタタ…」と刻むメロディ
- 「ターー…」と伸ばすメロディ
のどちらの方向性でメロディを組み立てるかということを意味します。
例えば、同じ「ド・ファ・ソ」という音階を持つ場合でも、それを
と聴かせるのと、
と聴かせるのとでは、それぞれのメロディから感じられる雰囲気は大きく変わります。
「タタタ…」と刻むメロディからはせわしない雰囲気が感じられ、また言い方を変えればそこからは華やかな印象も受けます。
反面で「ターー…」と伸ばすメロディにはどっしりとした雰囲気があり、落ち着いたムードを演出するのに合っているともいえます。
この点も、どちらが良い・悪いということはなく、それぞれをバランスよく盛り込むことがポイントとなりますが、自分の目指す雰囲気に合わせてリズムの細かさをコントロールすることで、理想とするメロディにより近づけることができます。
▼関連ページ
作曲のコツ|メロディに使われる音符の種類に気を配りリズム的印象を操作する
リズムな観点(2)メロディの始め方に配慮する
音符の細かさと合わせて、「始め方」という点もメロディをリズム的な観点から組み立てる際のポイントとなります。
伴奏に合わせてメロディを始める際、その始め方には
- 伴奏と同時にメロディが始まる
- 伴奏よりも前からメロディが始まる
- 伴奏よりも後からメロディが始まる
という三種類しかありません。
▼関連ページ
作曲のコツ|ブロック冒頭におけるメロディの始め方に気を配り印象を操作する
詳しい解説は上記ページでも行っていますが、以下はそれらを図で表したものです。
同時で始まるメロディには標準的な心地よさがあり、伴奏のアクセントと合わせてメロディが弾けるような力強さがそこから感じられます。
また、伴奏よりも前から始まるメロディからは勢いが感じられ、後から始まるメロディには落ち着いた雰囲気があります。
このように、「どのように始めるか」という点を踏まえてメロディを作り込むことで、メロディが与える印象をきちんと演出することができます。
それぞれを念頭に置きながらメロディを考える
ここまでにご紹介したいくつか手法は、実際には作っているメロディにリアルタイムで反映させていくべき事柄です。
それは、具体的には
- どっしりした雰囲気にしたいから「ターー…」と伸ばすようなメロディにしよう
- 音階的なインパクトを与えたいから跳躍進行で音を進ませよう
- メロディは伴奏と同時で始める感じにしてみよう
という意識持ってメロディ作りに臨む、ということです。
「どのようなメロディにしたいか」という点から、上記の手法を活用してある程度の方針を決め、それに沿ってメロディを考えることがポイントとなります。
- スケールと構成音を意識する
- 順次進行・跳躍進行の音階をバランスよく混ぜる
- メロディの持つ音符の細かさに配慮する
- メロディの始め方に配慮する
メロディ作りに強くなる本
メロディ作りのコツについて、「メロディ作りに強くなる本」というコンテンツとしてまとめています。 「メロディ作りに強くなる本」のご紹介
まとめ
ここまで、メロディが作れないという人のためにメロディの作り方やメロディを作るための方法・思考について、解説してきました。
大前提として、自分の作ったメロディに対してあまりに厳しくしすぎていると、いつまで経ってもメロディは完成していきません。
慣れないうちはある程度の品質を持ったメロディを許容する器の大きさが必要で、そうやっていくつかメロディを作っていくうちに、段々と自由に良いメロディを思い浮かべることができるようになっていきます。
また、メロディ作りには既存の曲を上記でご紹介したような観点から分析したり、それをアレンジして自分のメロディに活用することも効果的です。
このような取り組みを通して、メロディ作りの感性を磨いてみて下さい。
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