私は、特にコード進行についてこれまであれこれと試行錯誤をしてきた人間です。
そのような背景もありながら、先日以下の投稿をしました。
ツーファイブワン=キーCでいう「Dm7→G7→C」などは結びつきが強いため、
「ひとつあると他が連想できる」
という解釈が成り立ちます。
例えばコード進行の中に「G7」がぽつんとあるだけで、その直前に「Dm7」、直後に「C」が連想できます。
この辺りはコードの挿入/分割の基礎的な部分です。— うちやま|作曲の先生 (@sakkyoku_info) July 8, 2020
この投稿にあるように、ヒット曲のコード進行や、自分が既に知っているコード進行をさらにアレンジして聴きごたえのあるものを作る時には、コード進行をパーツで解釈することが多いです。
具体的には、上記の例にあるように「Dm7→G7→C」のような組み合わせを活用したり、機能や前後関係からコードを置き換えたり挿入したりします。
こちらのページでは、そんな「コード進行のアレンジ」のやり方や考え方について解説してみます。
目次
コード進行のアレンジによって独自の展開を生み出す
「コード進行のアレンジ」とは、文字通り「土台となるコード進行をもとに新たな展開を生み出すこと」を指します。
これは、言い換えれば「リハーモナイズ」の行為ともいえます。
▼関連ページ
リハーモナイズの解説|概要と考え方、やり方や実例などを詳しく説明します
ただ、リハーモナイズが
「メロディに影響を与えず、そこに新たなハーモニーを与える」
というような観点によって行われるのに対し、こちらのページでテーマとしている「コード進行のアレンジ」はもっと発展性のあるものです。
つまり、元となるコード進行をきっかけとしてそこから独自の展開を考え、それによってある一つのコード進行から制限なくさまざまなコード進行を連想します。
結果として、それを「コード進行を生み出す力」に変えていくことができるのです。
他のキーにあるコードの流れを組み込む
コード進行アレンジの手法として真っ先に挙げられるのが、「他のキーにあるコードの流れを組み込む」というやり方です。
これは、冒頭の投稿でも述べていた「G7→C」のような定番といえるコードの流れを他のキーでも活用することを指します。
1.「ツーファイブワン」の活用
通常、コード進行は「キー」と「ダイアトニックコード」を活用しながら作られるものです。
▼関連ページ
キー(音楽)について キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉
ダイアトニックコードとスリーコード 概要や成り立ち、コードの役割などについて
そのうえで、中でも「ツーファイブワン」と呼ばれるコード進行はそれを象徴するものとしてとても強い結びつきを持っています。
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ツーファイブとは?(概要と基本的な成り立ち、活用方法、マイナーキーにおける例など)
これは文字通りダイアトニックコードにおける
二番目(II)→五番目(V)→一番目(I)
のコードの流れを指しますが、以下はその例として、「キー=C」における「ツーファイブワン」を示したものです。
- Dm→G→C(IIm→V→I)※三和音
- Dm7→G7→CM7(IIm7→V7→IM7)※四和音
- Dm→G7→C(IIm→V7→I)※三和音と四和音の混合例
ダイアトニックコードには、ここで挙げているように「三和音」「四和音」という二種類があり、それぞれによってツーファイブワンを表現することができます。
前後のコードが連想できる
上記で挙げたツーファイブワンはとても強い結びつきを持っているため、ひとつのコードから前後のコードが連想できてしまいます。
例えば「キー=C」における「Dm→G→C」という型をもとにすれば、
- 「Dm」のみがある→直後に「G」が連想できる
- 「G」のみがある→直前に「Dm」が、直後に「C」が連想できる
- 「C」のみがある→直前に「G」が連想できる
ということです。
これをもとにすると、他のキーにおいて例えば「Dm」などが活用されていた場合にはその直後に「G」が自動的に連想できることになります。
例えば、「キー=F」において以下のようなコード進行が存在していたとします。
F→Dm→B♭→C(I→VIm→IV→V)
ここで、前述した「キー=C」の「Dm→G→C」を理解していれば、「Dm」の直後に「G」を挿入して
F→Dm→G→B♭→C
というように、コード進行をアレンジすることができます。
「キー=F」における「G」はダイアトニックコード以外のコード(ノンダイアトニックコード)です。
他にも、同じツーファイブワンにおける「G→C」を活用すれば、以下のようなアレンジも可能です。
F→Dm→B♭→G→C
このように、発想次第でいろいろなアレンジができてしまいますが、これが上記で述べていた「他のキーにあるコードの流れを組み込む」を意味するものです。
各キーのツーファイブワンを把握しているほど柔軟にアレンジできる
この手法はツーファイブワンをそのまま活用するため、必然的に各キーにおけるツーファイブワンを沢山把握しているほどいろいろなアレンジができるということにつながります。
つまり、さまざまなツーファイブワンの形が連想できるほどに、いろいろなコードの直前/直後に新たなコードを加えることができるようになるのです。
言い換えると、あらゆるキーにおけるツーファイブワンを把握しておくことがこの手法を柔軟に活用するための鍵となる、といえます。
2.「♭系三種のコード」の活用
ツーファイブワンと並んで、「他のキーのコードを活用してアレンジする」という手法に分類されるのが、「♭III」「♭VI」「♭VII」を使うやり方です。
▼関連ページ
フラット系三種のノンダイアトニックコード 同主調マイナーからの借用
詳しくは上記ページにて解説していますが、この「♭III」「♭VI」「♭VII」の三種は、例えば「キー=C」では「E♭」「A♭」「B♭」にあたります。
これは、ダイアトニックコードにおける「三番目」「六番目」「七番目」をフラットさせることで簡単に導くことができます。
「Cダイアトニックコード」は「C,Dm,Em,F,G,Am,Bm-5」の七つで、そのうち「Em」「Am」「Bm-5」をフラットさせて「E♭」「A♭」「B♭」を導けます。
これらは同じ中心音を持つマイナーキーに存在しているコードで、つまりこの例(Cメジャー)では「Cマイナー」がそれにあたり、「E♭」「A♭」「B♭」はそこに存在しています。
ここで述べている「♭III」「♭VI」「♭VII」を使うやり方は、言い換えれば
メジャーキーの曲作りの中で、マイナーキーのコードを活用すること
ともいえます。
♭系三種のコードを組み込む
例えば、「キー=C」のコード進行として
C→Am→Dm→G
のような構成があったとして、そこで
Cマイナーのコード(E♭、A♭、B♭)を活用してみよう
という意識が持てれば、これらを
- C→B♭→Am→Dm→G
- C→Am→Dm→E♭→G
- C→Am→A♭→G
のようにアレンジすることができます。
もちろんこの「E♭」「A♭」「B♭」もノンダイアトニックコードであるため、このアレンジによって独自の響きを生み出すことができるはずです。
より柔軟なアレンジが可能
前述したツーファイブワンを活用する手法が
「〇〇というコードがあったらその直前/直後に〇〇を加える」
という発想で行っていたのに対し、この「♭III」「♭VI」「♭VII」はより自由です。
これを実施するためには、まず土台となるコード進行のキーを確認し、そのうえで「♭III」「♭VI」「♭VII」が何というコードになるのかを明確にします。
例えば
G→C→D→Em
のようなコード進行があった場合、まずキーを明らかにします。
※キー判別について、詳しくは以下のページを参考にしてみて下さい。 曲のキー(調)を判別する方法【コードのみからキーを判別する】そもそも「キー」とはどのようなものか?
このコード進行のキーは「G」だということがわかったら、次に「Gダイアトニックコード」を明らかにします。
そのうえで、「三番目」「六番目」「七番目」をフラットさせ、
- ♭III=B♭
- ♭VI=E♭
- ♭VII=F
という三つのコードを導くことができます。
そこから、コード進行にこれらを自由に挿入したり、既存のコードからの置き換えを実施して気持ちい響きを探っていくことができます。
- G→B♭→C→D→Em
- G→C→D→F
- G→C→E♭→D→Em
ツーファイブワンのように前後関係はあまり問われないため、より柔軟にコード進行をアレンジしやすいといえるでしょう。
リハーモナイズとの併用
ここまでにご紹介した「他のキーのコードを活用する」という発想は、ページ冒頭でも述べた「リハーモナイズ」と併用することもできます。
それにより、土台となるコード進行がいろいろな構成に変形されるため、アレンジはさらに多彩なものになっていきます。
それぞれを掛け合わせてアレンジする
例えば、前述した「キー=F」のコード進行である
F→Dm→B♭→C(I→VIm→IV→V)
を、「Dm」からのツーファイブ「Dm→G(IIm→V)」という流れによって、
F→Dm→G→B♭→C
とアレンジしていたとします。※既に解説したツーファイブワンのアレンジ例と同じものです。
そのうえで、それとは別にリハーモナイズの観点から
ダイアトニックコードの「IV(この例におけるB♭)」を「IIm(Gm)」に置き換えることができる
という発想をあわせて持てるため、さらにこれを加えることによってコード進行を
F→Dm→G→Gm→C
のようにアレンジすることができます。
ここでは「G→Gm」のように、メジャーコードがマイナーコードの変形する面白い構成をそれによって導けています。
理論的知識とコード進行分析の重要性
実際のところリハーモナイズを併用して行うコードのアレンジは奥が深く、体系的にまとめてご紹介できない難しさがあります。
ひとつのコードからいろいろなリハーモナイズの構成が連想でき、それによって新たなコードの展開をそれぞれに作り上げることができるからです。
この辺りは、音楽理論の学習を通して
- このコードはリハモによってXXに置き換えられるかな?
- リハモによって〇〇のコードが加わるということは〇〇がその前後に置けるかな?
というような着眼点を持てるようになることが大切です。
これには、理論の学習と共に既存のコード進行を分析的な視点で紐解くのが一番効果的で、それと自分なりのコード進行のアレンジを並行して行えるとさらに理解は深まっていきます。
以下のページでは、コード進行の分析方法について述べていますので、是非参考にしてみて下さい。
コード進行分析の方法 アナライズの手順とコツ・注意点などの解説(キー判別、理論的解釈など)
まとめ
以下は、ここまでに述べたコード進行アレンジのアイディアまとめです。
- 他のキーのツーファイブワンを元に、それらを組み込む
- 「♭III」「♭VI」「♭VII」を組み込む
- 土台となるコード進行をリハーモナイズによって変形させ、それをさらにアレンジする
これ以外にもさまざまなアイディアによってコード進行をアレンジしていくことができます。
そのうえで、それらに沿ってコード進行のアレンジを繰り返していると、自然と自分でもゼロから魅力的なコード進行を作れるようになっていきます。
もちろん、音楽理論の学習もそれに欠かせませんが、これらを通してコード進行構築技術の強化を目指してみて下さい。
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