こちらのページでは、「かっこいい」「明るい」などのイメージに合わせて、そのような雰囲気を持つコード進行をいくつかご紹介していきます。
私はこれまで仕事で膨大な数のコード進行と向き合ってきていますが、そこから厳選したこれらがイメージに沿った曲作りのヒントになるはずです。
実際のところ、コード進行のサウンドからどんなイメージを抱くかは人それぞれです。またサウンドや曲調によっても感じる雰囲気は変わるため、あくまでも「一般的な印象」としてこれらを解釈して下さい。
※さまざまな雰囲気を体感するために、あえていろいろなキーのコード進行をご紹介しています。
目次
イメージ[1]かっこいい・ロック
「♭VII」の活用
「G→F→C→G」
「かっこいい」という雰囲気のコード進行を考えるうえで、真っ先に活用できるのが「♭VII」のコードです。
こちらでの「F」がそれにあたり、この例における「キー=Gメジャー」に存在していないコードがそのようなムードを高める働きをしています。
▼関連ページ フラット系三種のノンダイアトニックコード 同主調マイナーからの借用
「♭III」の活用
「E→G→D→E」
前述した「♭VII」とあわせて「かっこいい」を実現するために活用できるのが「♭III」で、こちらのコード進行における「G」がそれに相当するものです。
上記例のコード進行は、
- D=♭VII
- G=♭III
というふたつの♭系コードを含んでいます。
マイナーキーによる構成
「Gm→A♭7→Gm→A♭7」
「かっこいい」という雰囲気を考えるうえでは、マイナーキーによる構成もその候補に入れることができます。
これには本当にさまざまなアプローチが考えられますが、こちらの例では特に怪しげでソリッドなサウンドを持つふたつのコードによってコード進行を組み立てています。
▼関連ページ かっこいい!コード進行 全10パターン ロック等に使えるおすすめのコード進行
イメージ[2]明るい・清潔・綺麗
1度のコード、および「II7」の活用
「F→G7→B♭→C7」
コード進行の持つ明るさは、そのキーのダイアトニックコードにおける「1度(I)」の音によって生み出されることが多いです。
この例における「F」は文字通り「Fメジャーダイアトニックコード」における1度のコードで、そこに続く「G7(II7)」がさらに明るい雰囲気を強めています。
「sus4」を使った安定感のある構成
「G→Gsus4→G→Gsus4」
「明るい=安定」と捉え、前述した1度のコードをアレンジしながら引き延ばすように組み立てるとその雰囲気を維持することができます。
ここでは「sus4」を活用して、ふたつのコードのみによる構成として「G」というコードの持つ安定したサウンドを前面に押し出しています。
そもそもこのようなサウンドは「G」の構成音を微妙に揺らがせるようにするだけで生み出せてしまうため、「コード進行」とは言い難いところもあります。
分数コード(オンコード)による1度ルート音の保持
「C→FonC→GonC→C」
1度のコードの持つ安定感は分数コード(オンコード)によっても表現できます。
ここでは「C→F→G」というスリーコードの構成全てに「C」のベース音を加えることによって、コード進行にどっしりとした明るさが生まれています。
▼関連ページ 「明るい」と感じるコード進行 全10パターン 爽やかで前向きな雰囲気を持つおすすめのコード進行
イメージ[3]暗い・悲しい
マイナーダイアトニックコードの基本進行
「Am→G→F→E7」
一般的に暗い印象を与えるサウンドはマイナーコードによってもたらされ、なかでもこちらで例として挙げたようなルート音を順番に下げていく構成はその象徴ともいえるものです。
ここでは、ルート音が
ラ(A)→ソ(G)→ファ(F)→ミ(E)
のようにつながっていますが、構成の最後にある「E7」がより強く「Am」のコードを連想させるため、そこから流れを循環させる目的で冒頭の「Am」へとつなげることも検討できます。
マイナーコードのクリシェ
「Dm→DmM7→Dm7→Dm6」
このコード進行は「クリシェ」と呼ばれる手法によるものです。
▼関連ページ クリシェの技法解説 コード進行におけるクリシェの概要と典型的な使用例、アレンジ例など
コードの展開によって「Dm」にある「レ」の音が、
レ→レ♭→ド→シ
と順番に下がっていくことで、マイナーコードの安定感を保ちつつ暗い雰囲気が生み出されます。
メジャーキーにおいてマイナーコードを際立てる進行
「E→G#m7-5→C#7→F#m」
ここでテーマとしている「暗い」というムードは、メジャーキーでも表現できます。
この例は、フラットファイブ系のコード「G#m7-5」を活用し、メジャーキーにおけるマイナーコードの「F#m」を際立てるような流れを作ったものです。
▼関連ページ 「悲しい」コード進行 全10パターン 切ない曲・哀愁のある曲などに使えるおすすめのコード進行
イメージ[4]穏やか・落ち着く・安らぎ
浮遊感を演出するツーコード構成
「G→C→G→C」
穏やかな雰囲気を実現するのは「キーの範囲に収まるコードの流れ」で、こちらで例として挙げた構成ではそれをふたつのコードによって表現しています。
ここでの「G」と「C」はダイアトニックコードにおける1度(I)と4度(IV)のコードにあたりますが、このようなつながりは独特な浮遊感を生み出します。
カノン進行風の流れ
「A→E→F#m→C#m」
いわゆる「カノン進行」に近い構成がこちらの例にあるコード進行で、このように予定調和なコードの流れも「穏やか」「落ち着く」という印象を与えます。
落ち着いたサウンドによって表現することで、そのようなムードをより高めることができるはずです。
分数コードによる安定感の演出
「E→DonE→E→DonE」
上記の「イメージ[2]明るい」でもご紹介した分数コードを活用した構成は、同じような観点から穏やかな雰囲気を演出するのにも役立ちます。
こちらでは「E」のルート音を保持することで、安定感のあるサウンドを生み出しています。
▼関連ページ 「落ち着いた雰囲気を持つコード進行」を考える 静かな雰囲気・安定感のある響きなどを持ったコードの流れ
イメージ[5]切ない・ノスタルジック
トニック(I)のクリシェ
「A→AM7→A7」
上記でもご紹介した「クリシェ」の構成は、切ない雰囲気を演出するのに重宝します。
こちらでは、コード「A」の持つ「ラ」の音が
ラ→ラ♭→ソ
と変化していきますが、このような半音の進行が独特な響きの揺らぎを生みます。
1度のコードから順番につなぐコード進行
「C→Dm→Em→F」
半音進行の他に、「順次進行」によっても切ない雰囲気を感じることができます。
ここで挙げた「ダイアトニックコードを1度のコードから順番につなげていく構成」はその一例で、ルート音が高い音に向かって着実に上がっていくため、どことなくノスタルジックなムードが生まれます。
サブドミナントマイナーの活用
「D→Gm→F#m→Bm」
ここにある「Gm」は、「Dメジャーダイアトニックコード」における4度のコード「G」をマイナーコードにした、キーの範囲外にあるコードです。
このようなコードは「サブドミナントマイナーコード」などと呼ばれ、切ない雰囲気を演出するためによく活用されます。
▼関連ページ サブドミナントマイナー(コード) その概要と使い方
ノスタルジックな雰囲気が感じられるコード進行 全12パターン なぜか懐かしい、心安らぐおすすめのコード進行
イメージ[6]オシャレ・大人びた雰囲気
セブンスコードとテンションコードの活用
「AM7(9)→B7(9)→Bm7(9)→E7(13)」
都会的な雰囲気を持つサウンドを目指すうえで欠かせないのが「セブンスコード」「テンションコード」を活用したコード進行です。
こちらで例として挙げている構成はボサノバの定番ともいえるもので、華やかなコードのサウンドがオシャレなムードを生んでいます。
サブドミナントコードから始まるコード進行(1)
「Em7(9)→A7(13)→DM7(9)→B7(♭13)」
ここでの「Em7(9)」は、「Dメジャーダイアトニックコード」における2度(IIm)のコードで、このように「1度のコード『D』から始めない」というやり方によっても都会的な雰囲気を少し強調することができます。
前述の例と同じく、こちらでもセブンスコードやテンションコードを多用しています。
サブドミナントコードから始まるコード進行(2)
「B♭M7→Am7→Dm7→Cm7→F7」
こちらにある「B♭M7」を冒頭に置いた構成も、既にご紹介した「1度のコードから始めない」と同じ発想によるものです。
このように、動的なコード進行は大人びた雰囲気を表現するのに最適です。
▼関連ページ コード進行をおしゃれにする R&B風コード進行の紹介とその作り方の解説
イメージ[7]感動的
トニックに着地しそうでしない流れ
「F#m7→B7→G#m7→C#m7」
このコード進行例は、ここで取り上げている「感動的」というイメージをバラード曲に似合うような「壮大なサウンド」に置き換えて解釈したものです。
「Eメジャーダイアトニックコード」における「E」のコードをあえて取り除き、そこに向かうようでいてなかなかたどり着けない、というもどかしさが感動的な雰囲気を生み出しています。
サブドミナントマイナーコードから直接着地する進行
「A→Bm→Dm→A」
この例における「Dm」は前述した「サブドミナントマイナー」に相当するもので、そこから直接「A」へとつなげています。
このような構成からは、「切ない」と共に感動的なムードも感じることができます。
5度のクリシェ
「C→Caug→C6→C7」
こちらは既にご紹介した「クリシェ」の別バージョンで、ここでは「C」にある「ソ」の音が
ソ→ソ#→ラ→ラ#
と徐々に上がっていくような構成となっています。
半音の進行は感動的な雰囲気を生みますが、こちらではそれが上昇することでより前向きなサウンドに感じられます。
▼関連ページ 泣ける!コード進行 全10パターン 感動的な曲、心にグッとくる曲にするためのおすすめコード進行
まとめ
冒頭でも述べた通り、イメージに沿ってコード進行を聴かせるうえでは、コードのつながりとあわせて曲調やサウンドに配慮することも欠かせません。
上記で挙げたコード進行をもとに、自分の目指す曲の雰囲気をアレンジと共に探ってみて下さい。
ポップス・ロック作曲の上達につながる「曲分析ガイドブック」について知る
