こちらのページでは、「コード進行」とは何か、そしてコード進行はどのように作られるものか、という点について解説します。
私はこれまでに、仕事で7000曲ほどのコード譜を制作してきました。
そのような経緯もあり、日頃からコード進行そのものに触れることやコード進行を理論的に解釈したり耳コピしたりすることを常に行っていますが、そんな「コード進行マニア」である私の目線から「コード進行」について掘り下げてみます。
また、記事の最後にはコード進行の例やおすすめのコード進行パターンについてもご紹介しています。
▼「コードとは何か?」という点については、以下のページをご確認ください。
【コード(和音)とは?】 音楽で扱われている「コード」はどのように成り立っているか?を考える目次
はじめに
「コード」の「進行」
「コード進行」とは読んで字のごとく「コード」の「進行」のことで、「どのようにコードを進めていくか」ということを表した言葉です。
具体的には、あるひとつの「コード」=「和音(わおん)」が時間の経過と共にどんなコードに変わりどう展開していくかということを意味していて、「ここの部分のコード進行は……」というような言葉の使われ方をします。
コード進行によって背景の響きを変えてストーリーを演出する
ポップス・ロックにおけるコードはメロディの背景のような存在であり、通常コードは曲の中で次々と変化していくため、それがこのページのテーマである「コード進行」を生み出します。
各コードには違った響きがあり、コードが変わることでことでリスナーはその響きの変化を感じることができます。
コードが変わると同じメロディでも聴こえ方が変わるもので、これはまさに背景が変わっているような状態だといえます。
「コード進行」というものを考える時、そこには響きの変化があり、そしてそれによって生まれる背景(ストーリー)の変化があることを理解しましょう。
コード進行構築の概要
コード進行はルールに沿って組み立てられる
コードには、数え切れないほどいろいろな種類が存在しています。
そして、上記でお伝えしたように「コード進行」としてそれらをつないで展開させていく時、やみくもにコードが選ばれることはほぼ無く、それらは基本的なルールに沿って構築されることがほとんどです。
そのルールをある程度把握して一貫性を保ちながらコードの展開を組み立てていくことで、はじめて音楽から心地良さが感じられるようになります。
コード進行を組み立てるうえでのルール
上記で述べた「コード進行構築を組み立てるうえでの基本的なルール」とは以下の二つです。
- キー(調)
- コードが持つ機能と基本的なコード進行
通常、コード進行はあるひとつの「キー(調)」と、そのキーから導き出されるいくつかのコード(ダイアトニックコード)をもとに組み立てられます。
▼「キー」について、詳しくは以下のページにて解説しています。
キー(音楽)について キー=「中心音」と「まとまりのある音のグループ」を意味する言葉どのようにコード進行を組み立てるか
「キー」→「ダイアトニックコード」→「基本的なコード進行」
既に述べた通り、コード進行を組み立てるうえではまず「キーを確定させること」が必要となります。
それにより、キーに準拠したコード(ダイアトニックコード等)が明らかとなり、そこから、それらを活用した基本的なコード進行が割り出されます。
実際の楽曲におけるコード進行は、その「基本的なコード進行」を土台として作られていきます。
コード進行を組み立てる手順の例
以下に、コード進行を組み立てる手順を例として示します。
1. キーの確定
コード進行を組み立てるための最初の手順として、まず初めにキーを確定させます。ここでは例として、キーを「Cメジャー」に定めます。
2. ダイアトニックコードの確定
キーを定めることで、そのキーのダイアトニックコードが明らかになります。
ここでの例は「キー=Cメジャー」であるため、それをもとにした「Cメジャーダイアトニックコード」として
C, Dm, Em, F, G, Am, Bm-5
の7つのコードが割り出されます。
▼ダイアトニックコードについて詳しくは以下のページをご確認ください。
ダイアトニックコードとスリーコード 概要や成り立ち、コードの役割などについて3. 基本的なコード進行の確定
上記別ページでも解説している通り、コードには役割(機能)があり、それらをもとにしたコード進行の最小単位のようなもの(カデンツ)がまとめられています。
▼「カデンツ」解説ページ
カデンツ(終止形)の詳細とポップス・ロック作曲への応用そこから、ダイアトニックコードの中にある三つのコード(スリーコード)を使って以下のようなコード進行を作り上げることができます。
- C→G→C
- C→F→G→C
- C→F→C
また、ここに「代理コード」の概念を加えると、さらに以下のようなコード進行も作りあげることができます。
- C→G→Am
- C→Dm→G→Am
- C→Dm→Em
- C→Em→Am→Dm→G
▼「代理コード」解説ページ
代理コードについて あるコードに似た響きを持つコード&スリーコードの代わりに活用するマイナーコード上記はカデンツ三種を代理コードによって置き換えたものですが、これら以外にも考え方次第でいろいろなコード進行を想定することができます。
ここまでの流れを通して、キーの範囲内で柔軟にコード進行を作り上げていくことができるようになります。
個性的なコード進行の構築
上記の手順を経て、そこからさらに個性的なコード進行を生み出すためには、キーに準拠した基本的なコード進行をアレンジすることが求められます。
この「アレンジ」とは、つまるところ上記でお伝えした「コード進行を組み立てるうえでのルール」を乗り越えることで、具体的には、
- キー=ダイアトニックコード以外のコード(ノンダイアトニックコード)を盛り込む
- コードの機能を無視する
- キーそのものを変える(転調)
などの方法が考えられます。
▼関連ページ
ノンダイアトニックコード 意味とその種類の解説 活用のルールやコード進行例等 転調 その1 転調の概要(転調とは中心音と音のグループを変えること)と調の種類理論的な知識の理解が不可欠
個性的なコード進行を作るうえでは、キーに準拠した基本的なコード進行を無計画にアレンジするのではなく、理論的な裏付けを用いることがほとんどです。
それを踏まえると、コード進行を意図的に組み立てられるようになるためには理論的な知識が必要で、キーやコード、構成音やコードの役割などに関する知識がきちんと備わることで、それらをより効果的に応用していくことができます。
音楽理論の学習について
以下のページでは、上記で述べた音楽理論を学ぶにあたり、「何を」「どのような順番で」学べばいいか、という点について解説しています。
音楽理論を知りたい人のための「学習の見取り図」※独学に活用できる「音楽理論の何をどの順番で学べばいいか」のまとめコード進行の例・おすすめのコード進行パターン
以下のページでは、コード進行の実例を多数掲載しています。
コード進行パターン集(1)全20パターン シンプル構成からロック・ボサノバ風まで コード進行パターン集(2)全20パターン ビートルズ風コード、ブルース風コードなど コード進行パターン集(3)全20パターン ルート音の変化、テンションや分数コードによるジャズ風アプローチなど コード進行パターン集(4)全20パターン マイナー系コード進行やAOR風のサウンドなど コード進行パターン集(5)全20パターン クリシェラインのベース活用、ツーコードのシンプル構成など コード進行パターン集(6)全20パターン ディミニッシュコードやペダルポイントを活用した上級アプローチ
これらのコード進行は、そのまま作曲や演奏に活用できるものです。
「キー」とその解説をもとに成り立ちを理解すれば、それらを自分なりにアレンジすることもできるはずです。
コード進行の理解を深める意味で、あわせて参考にしてみて下さい。
まとめ
以下は、「コード進行」および「コード進行の作り方」のまとめです。
- コード進行=和音の変化。
- コードはメロディの背景となり、それが「コード進行」として切り替わることで響きの変化が生まれる。
- コード進行は「キー」と「コードの役割(機能)」に基づいて組み立てられ、それぞれによって基本的なコード進行が割り出される。
- 個性的なコード進行は基本的な進行のアレンジによって生み出される。それゆえに、基本を応用するための理論的知識が必要。
実例に沢山触れつつ、理論的な理解を深めていくことで徐々に柔軟な発想でコード進行を組み立てられるようになっていくため、少しずつ作れる幅を広げていくような姿勢で取り組んでみて下さい。
良いコード進行を組み立てられた時はすごく嬉しいものです。
補足
以下のページでは、コード進行を理解するのに役立つ本についてまとめています。
コード進行本のおすすめ7選|コード進行を知りたい・理解したい・作れるようになりたい人のための本をご紹介します。ポップス・ロック作曲の上達につながる「曲分析ガイドブック」について知る
作曲がぐんぐん上達する「曲分析ガイドブック」のご紹介ページ